用語
縦磁化が63.2%まで回復する時間。→T1値が小さいほど縦磁化の回復は速いため信号は大きくなる。
静磁場が大きくなるとT1値も延長する。(比例関係ではない)
解説
90°パルスを照射後、縦磁化は0となり無くなります。
そこから徐々に回復し、63.2%まで回復した時間をT1という。(最終的には100%まで回復する。)
例えば、脂肪のT1値が250msだとすると、90°パルス照射後250msで63.2%まで縦磁化が回復する。
縦緩和
縦緩和とは、RFパルスにより与えられたエネルギーを付近の分子(運動周波数の近い分子または格子とも言う)に受け渡して縦磁化が回復していくもの。
その分子が多いほど回復が早くなる、要するにT1値は短くなると言える。
静磁場強度が高くなるほどその分子は減る傾向にあるため、静磁場強度が高くなるほどT1値は延長してしまう。(比例ではない)
他の緩和との関係性
T2緩和は水分子内の水素原子によって磁場が揺動され生じる。T1緩和は運動周波数の近い分子によって生じる。
各緩和に関与する要素はT2緩和のほうが多い。
そのためT1緩和もT2緩和も同時に始まるが、T2緩和の方が先に終了する。
※純水の時は同時に始まり同時に終わる。
T1値の変動
T1値は環境によって変動する。
静磁場強度が高いほどT1値は延長する。
温度によってもT1値は変動し、基本的に温度が高いほど延長し、温度が低いほど短縮する。そのため死後撮影では体温が低下しているためSTIRやFLAIRで目的組織(脂肪やCSF)が抑制されないことがある。
認定試験でのポイント
T2値(36.8%まで減衰)と混同しやすいので注意。試験ではそれを誘う問題が出たことがある。13-1
他のT2値、T2*値との関係も覚えておく。(T1値≧T2値≧T2*値)(T1緩和速度≦T2緩和速度≦T2*緩和速度)
T1値と言うよりT1緩和の話になるが、
T1緩和=縦緩和=スピン-格子緩和
磁場強度の上昇によりT1値は延長する。
温度変化によってもT1値は変化し、基本的に温度の上昇によりT1値は延長し温度の低下によりT1値は低下する。
ざっくりT1値を覚えておく。(正確に全ての組織のT1値を覚える必要はないと思う)
※上記はあくまで覚えやすいように大まかな数値にしています。
過去問
17-問題 8 温度と MRI について正しいものを選べ.
1. 水の T2 値は温度の上昇に伴い延長する傾向にある。
2. 生体内のすべての組織は体温の上昇に伴い T1 値が延長する。
3. Chemical exchange saturation transfer(CEST)MRI に温度の影響はない。
4. Ice-water ファントム(0 °C)を用いると室温(25 °C)の水より ADC が高くなる。
5. MR spectroscopy による proton density fat fraction 測定では温度の影響はない。
1.○温度上昇に伴い相関時間τは短くなる(氷より液体の方が相関時間が短い)ためT2値は延長すると推測。参考
2.×水においては体温上昇に伴いT1値は延長する(体温低下に伴いT1値が低下する)が「すべての組織」というのが誤りか
3.×CEST化学交換飽和移動。pHと温度依存性がある。温度が上昇するほどCEST効果が大きくなり信号は低下する。CEST
4.×温度が高いほど拡散係数は高くADC値は高くなり、温度が低いほど拡散係数は低くなりADC値は低くなると思われる。DWI
5.×proton density fat fraction:プロトン密度脂肪率測定。肝臓の脂肪沈着を定量的に観察する。
14-2) 正しい記述はどれか。2 つ選べ。
- T1値≧T2値
- T2値>T2*値
- 脂肪のT1値 > 水のT1値
- 脂肪のT2値 > 水のT2値
- 大脳白質の ADC > 大脳灰白質の ADC
1.○縦緩和と横緩和は同時に始まるが横緩和が先に終了する(T1値>T2値)、ただし純水のみ同時に終了する(T1値=T2値)。
2.○外部要因も緩和に影響するT2*値は一番小さい。
3.×脂肪のT1値 < 水のT1値。T1WIのとき縦磁化の回復が早い(T1値小さい)脂肪が高信号。
4.×脂肪のT2値 < 水のT2値。T2WIのとき横磁化の減衰の遅い(T2値大きい)水が高信号。
5.×白質0.5~0.8×10-3mm2/sec < 灰白質0.8~0.9×10-3mm2/sec
14-3) NMR 信号の信号雑音比に関する正しい記述はどれか。2 つ選べ。
- T1 値の長い試料ほど大きくなる。
- T2 値の長い試料ほど大きくなる。
- エコー時間が長くなると大きくなる。
- 繰り返し時間が長くなると大きくなる。
- 1ch あたりの受信コイルの半径が長くなると大きくなる。
1.×縦磁化が63%まで回復する時間、長いほど信号の回復は遅いため小さい。
2.○横磁化が36%まで減衰する時間、長いほど減衰が遅いため大きい。
3.×TEは短いほど信号は大きい。
4.○TRは長いほど信号は大きい。
5.×コイル半径は小さいほど信号は大きい。
13-1) 緩和時間に関する正しい記述はどれか。(正解 2 つ)
1. 縦緩和時間 ≧ 横緩和時間である。
2. T1 緩和はスピン-格子緩和とも呼ばれる。
3. T2 緩和はスピン-格子緩和とも呼ばれる。
4. スピン-格子緩和時間とは、縦磁化が初期磁化の 36.8%になる時間である。
5. スピン-スピン緩和時間とは、縦磁化が初期磁化の36.8%になる時間である。
1.○縦緩和と横緩和は同時に始まるが横緩和が先に終了する(T1値>T2値)、ただし純水のみ同時に終了する(T1値=T2値)。
2.○
3.×スピン-スピン緩和
4.×T1:縦磁化が63.2%まで回復する時間
5.×T2:横磁化が36.8%まで減衰する時間
10-40) 静磁場強度変化について正しいものを選択してください。(正解 3 つ)
1.プロトンの共鳴周波数は静磁場強度に比例する。
2.静磁場強度が増加すると白質の T1 値は短縮する。
3.静磁場強度が増加すると灰白質の T1 値は延長する。
4.1.5 Tにおける90度RFパルスと3.0 Tにおける90度RFパルスは、同じRF強度である。
5.1.5 T において 4.6 ms で opposed phase が観察された場合、その opposed phase は3.0 T において 2.3 ms で観察される。
1.○ ω0=γB0
2.×延長する。
3.○
4.×
5.○正解としていいと思うが、実際1.5Tの4.6msで観察されるのはin phase、3Tの2.3msもin phaseである。
9-19) 静磁場強度変化について正しいものを選択してください。(正解 3 つ)
1.プロトンの共鳴周波数は静磁場強度に比例する。
2.静磁場強度が増加すると白質の T1 値は短縮する。
3.静磁場強度が増加すると灰白質の T1 値は延長する。
4.1.5 T における 90 度 RF パルスと 3.0 T における 90 度 RF パルスは、同じ RF 強度 である。
5.1.5 T において 4.6 msで Opposed phase が観察された場合、その Opposed phase は 3.0Tにおいて2.3 msで観察される。
1.○ ω0=γB0
2.×延長する。
3.○
4.×
5.○正解としていいと思うが、実際1.5Tの4.6msで観察されるのはin phase、3Tの2.3msもin phaseである。
7-1)次の記述について正しい文章を選択して下さい。(正解3つ)
1. 緩和現象は BPP 理論が基礎となっている。
2. T1 値は静磁場強度に比例して延長する。
3. T2 値は分子の運動周波数が大きいほど短くなる。
4. T2 緩和の原因は双極子-双極子相互作用による局所磁場揺動である。
5. 分子の運動周波数が共鳴周波数に最も近い場合に最短の T1 値になる。
1.○
2.×延長するが比例はしない。
3.×運動周波数が大きいほど長くなる。
4.○
5.○
7-4)次の記述について正しい文章を選択して下さい.(正解 2 つ)
1.T1 は縦磁化が 36.8%まで回復する時間である。
2.T1 は磁場強度が高くなるほど短くなる。
3.T2 は横磁化が 63.2%まで減衰する時間である。
4.磁場の不均一は T2(T2*)を短縮させる。
5.MRI造影剤はT1 およびT2を変化させる。
1.×63.2%まで回復する時間。
2.×基本的には延長する。
3.×36.8%まで減衰する時間。
4.○
5.○
5-(5) 3.0T について、正しい文章を解答して下さい。
a. 物質のT1値は1.5Tより約1.4倍長くなる。
b. 磁化率効果は1.5Tより約1.4倍大きくなる。
c. 比吸収率(SAR)は、1.5Tより約4倍大きくなる。
d. RFの生体への浸透力は1.5Tより大きくなる。
e. 脂肪の共鳴周波数は水の共鳴周波数より約447Hz低い。
a.×静磁場強度が上がるとT1値は延長するがその程度は物質による。
b.×2倍
c.○
d.×RFの浸透は小さい。
e.○
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