MRI認定試験の合格者たちはたいてい何冊かの書籍を読み漁って合格したと思います。
中には要領がよくて、過去問を解いてちょっと勉強しただけで受かる人もいるでしょうけど。
ただ、最近の出題傾向として過去問と類似する問が減ってきたことや基礎的な問でも今までと違う聞かれ方をすることが多くなりました。
また最先端技術ではないものの新しい技術や一時トレンドであったCompressed sensingなどの出題が多い印象となっています。
この試験に受かるには過去問を解いて対策する事はもちろん、大変めんどうではありますが本を読んで勉強しておく事が必須なのかと思います。
しかし参考書籍と言われるものは多くあり、一冊一冊のボリュームもまた値段もなかなかのものです。
そこでなるべく無駄な労力を省くため参考書籍を絞ることは大事となります。
今回は出題傾向を考慮してオススメのものを数冊挙げましたので読んでみてください。
分析
過去問を一つ一つチェックし、どの書籍から出題されているかをまとめました。(正確には書籍から出題されているかというより参考となる書籍というべきか。くどいか)
問によっては選択肢ごとに違う書籍から出題されている場合もありますし、一つの問で書籍が重複している場合もあります。
そして問題数の多さからチェックはかなりサラッとしかしていないため多少は僕の誤認もあります。
ご了承くださいませ。
ではこんな感じ
全部で500問あります。
一つに30秒かけても終わらせるのに約4時間。なのでほんと適当に分析したまでです。
表の解説になりますが、
表の右側にピックアップした書籍とその色分け
表には問題ごとに書籍の色付けをしています。
空白は解剖や画像からの出題だったり、そもそもわからなかったりです。
おおまかに
【MRI完全解説】【MRI撮像技術学】はだいたい基礎の問題、もしくは撮技。
【MRI評価と解析】【MRI集中講座】は画像評価試験など。
【MRI安全性の考え方】安全について。
【MRI応用自在】技術的な事について。
傾向として
第5回からの情報しかありませんが、当初は基礎的な出題が多くその傾向は数年間続きますが近年では減ってきている印象を受けます。
その代わりCEST、elastography、MAGiCに使われているSynthetic MRIなど応用技術の問題が出題され始めています。
これらを踏まえて次にオススメ書籍を紹介します。
書籍3冊を紹介!
MRI完全解説 (オススメ1)
ページ数は703Pあり分厚く重い。そして汚い。写真はカバーを外している状態です。
でも基礎的なことは網羅しており試験には必須と言っていい。
原理から始まりk空間、傾斜磁場、RF、パルスシーケンスなどMR初学者だったらこれ一冊をまずしっかり読み込むのが近道かと思います。この本が愛読書となっている頃には基礎力がついているので他の参考書や文献を読んでも飲み込みの良さが全然ちがいます。
勉強していた時期にはこれを職場に持っていって家に持ち帰ってきてを繰り返していました。でもしんどくてとうとう電子書籍版も購入してしまいます。
結果的には、仕事中など気になった時にすぐスマホから調べられるし紙と電子の二つ持ちしても後悔なく有効に使えています。
MRI集中講習 (オススメ2)
こちらは画像評価試験についてをメインとしたものです。
おまけで後半にはアーチファクトの対策方法がまとめてあり、これが意外と助かります。認定試験では「○○○アーチファクトの対策として正しいものを選べ」のような出題がよくあるためまとめられていると参考にしやすいのです。
しかしこの参考書の本領発揮は認定試験前の『性能評価試験』での実験です。
この実験がクセ者であり、みんなの「認定試験を受けようかな」って気持ちを消失させます。
ですがこの書籍には実験の過程と使われる式などがわかりやすく記載されているため実験がまだの方は是非購入を検討してみてください。
もしくは周りに持っていいる人がいれば実験まで借りるのもアリです。
価格は安いため購入しやすいです。
参考となった問題は第14回-13,14,15です。
MRI応用自在 (オススメ3)
最近新しく第4版が発行されました。(2021年3月1日 発行)
基礎的なことも若干載っていますがメインは技術について。また後半では臨床応用もあるため、読み切れずに認定試験に活かせなくとも仕事で役立つこととなるでしょう。
基礎はMRI完全解説に譲り、カバーしきれない技術や臨床をこの書籍で補います。
技術として圧縮センシングはもちろん、今後出題される可能性のある新技術面での補足にも使えるのでこの書籍を選びました。
参考となった問題は第15回-13です。
これら3冊にした理由は、それぞれの内容がなるべく重複せずに使い分けがきいて、出題傾向に対応できると考えたから。
メインはMRI完全解説とし要所要所で他2つでサポートできればと思います。
MRI集中講習に関しては薄く安いため購入と勉強の負担にならないところもポイントです。
書籍の使い方
勉強方法についてはまた改めて記事にしようかと思います。
ここでは簡単に書籍の使い方を説明します。
使い方なんですが、単刀直入にいうとMRI完全解説を何回も読破します。
これに尽きます。
はじめの一週目は理解に苦しんだり読んでて眠くなってきます。皆さんは違うかもしれませんが僕はそうでした。
まずそれでいいと思います。
そしていちいちノートにまとめたり理解するまで読み込まなくても分からなければ飛ばしましょう。
まずは一周します。
そしてこれを繰り返します。
ボリュームが多いだけに読み切るまで時間がかかりますがなるべく短い時間で一周し、一度読み切ったという実績を自分の中に作ってしまいます。
そして何周かしていると、途中で出てくる言葉が別なページでも出てきたことを覚えていたり、一周目で理解出来なかったものが突然理解できて腑に落ちることがあります。
特別な方法ではありませんが僕はこのように使いました。
余談ですが、僕の高校時代の歴史の先生は教科書のどのページに何の話が書いてあるか完全に覚えており、当時「気持ちわるっ」って思っていました。
しかしそのくらいになりましょう。気持ち悪くたっていいんです。
MRI応用自在についてはMRI完全解説をなんとなく理解できるようになってから読むと理解しやすいと思います。
例えば
MRI完全解説にもMRI応用自在にもBalanced SSFPが記載されていますが、完全解説を読んで→応用自在を読んだ方が圧倒的にわかりやすいです。
また、過去問を解きながら分からないところをMRI応用自在と照らし合わせて使ってもいいと思います。
MRI集中講習については、実験用と割り切っていいと思います。もしくは過去問で画像評価試験の出題があるためその時確認する程度でいいでしょう。
あまり参考書籍を多くしても負担が大きくなりますからね。
その他オススメ書籍
今回の記事でお勧めするものではありませんが、認定試験を解く上で他に参考となる書籍を紹介します。
MR撮像技術学 (その他1)
この本は学生時代の教科書として持っている方も多いのではないでしょうか。
原理から撮像技術、臨床応用まで広く記載されていてとても良い書籍です。
認定試験での活用として、心臓やMRSについてまとめられており参考になるかと思います。
個人的な感想ですが、僕はあまり好きではありませんでした。
内容はとても良いですし範囲も広くカバーできるので一読する価値は多分にあります。
ただ自分にはあまり合わなかったので、気になる項目だけ参考にし活用していました。
参考となった問題は第12回-18です。
MRI評価と解析 (その他2)
MRIの画像評価試験に関する項目が詳しく記載されています。
内容としてはMRI集中講習よりも詳細です。
また評価項目だけでなくASLなどの技術面での解説も詳しくとても良い書籍です。
ただ、スタートから購入してしまうと勉強の負担が大きくなるかと思いオススメ3冊からは外させていただきました。
参考となった問題は第15回-24です。
MRIの基本 パワーテキスト (その他3)
これも学生時代の教科書でした。
簡潔に原理について記載されています。
MRI完全解説みたいにクドくなくあっさりしているので、原理の勉強でこちらの方が向いている方もいるかもしれません。
『理解』と『暗記』の二つの習得過程があるとすれば、あっさりめな感じからMRI完全解説に比べて『暗記』のウェイトが大きい気がします。完全解説はもちろん『理解>暗記』かと。
パワーテキストでは章ごとに分けられており、章の最後に確認問題が数問あります。
この問題に「TR=○○、TE=○○…最大スライス数は何枚か?」のような計算問題があるのですが、このような問題はなかなか他の書籍には無く、ここは重宝します。
実際に第14回-18、第15回-16でも似たような問題があるため、パワーテキストの問題は一通り解いておけば認定試験の自信につながるかもしれません。
MRI安全性の考え方 (その他4)
ほんとについ最近、新しく第3版が発行されたようです。(2021/5/10)
第3版では全327P、第2版では全291Pです。第3版では体内埋め込み医療機器についてが追加されたのかと予想しますが読んでいないのでわかりません。
他の書籍とは毛色が違い、原理や技術についてはほとんど記載がなく、安全管理・国際基準・MRI装置の構造・検査室の設計などの内容となっています。
僕が持っているのは第2版ですが購入しても未だすべては読み切っていません。
認定試験に向けてこれを一読するには負担が大きすぎる気がして試験勉強の1冊としてはあまり強くお勧めできません。(ページ数は約300P)
ただ過去問では参考となる内容を含んでいるため、余裕のある方は購入した方がいいのかもしれません。
認定試験を考慮せずとも個人的に働いていてちゃんと理解できていないMR施設の構造や安全性、MR手術室など、興味ある内容もあるためMRIの書籍として間違いなくオススメできます。
参考となった問題は第14回-28です。
これらの他にもまだまだありますが長くなるのでまた改めてご紹介します。
3冊にした理由
これら3冊にした理由は、
それぞれの内容がなるべく重複せずに使い分けがきくこと。
金銭的負担も考慮し高額なものだけにしないこと。
出題傾向としてふさわしいもの。
実際にはこの3冊だけではカバーしきれません。
かといってたくさん読んでもその中から出るとも限りません。
だとしたらなるべく少ない書籍で基礎を固めて応用のきく状態にするべきかと思います。
またあまり考えたくありませんが、試験にかける思いや金額が大きければ大きいほど落ちた時のショックや損失が大きくなります。
そのためにも初めはなるべく厳選して少数精鋭の様な気持ちで取り掛かるのが良いと思います。
長々となってしまいましたがこれらはあくまで僕個人のオススメであり、ご自分に合う参考書籍を見つけるのが一番です。
医療書籍を扱う本屋さんがあれば実際に試読して選ぶのが良いと思いますので焦らずに考えてみてください。
上記リンクからではなくともネット通販により購入希望の方へご注意です。MRI完全解説では電子書籍版も発売されており、購入の際は「電子書籍」か「本(紙媒体)」かよく確認してください。
大抵、電子版の方が少し安く、「(電子版)」と表記されています。
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