SNRの計算問題は毎年1問は出題されており認定試験ではド定番の問題となっています。
しかし第14回からSNRの計算問題は出題されなく、第15回ではSNRについての出題すらありませんでした。
今後の流れとしては計算問題が出題される可能性は低く感じられますが、出題されても取りこぼさないためにも覚えておきましょう。
SNRについて
信号雑音比といい、FOVを広げたり加算平均回数(NSA)を増やすとSNRは上がり、BWを広げたりスライス厚を薄くするとSNRは下がります。
この様にSNRは複雑であり、撮像パラメータを少し変更しただけで容易に上下してしまいます。
そしてそれをまとめた式が以下となります。
FOV(R):周波数エンコード方向のFOV
FOV(P):位相エンコード方向のFOV
matrix(R):周波数エンコード方向のマトリックス数
matrix(P):位相エンコード方向のマトリックス数
slice thickness:スライス厚
NSA:加算平均回数
BW:バンド幅
この式は試験ではもちろん臨床でも重宝しますので必ず暗記してしまいましょう。
なぜSNRが上下するかの細かい関係性は今回は省略します。
では過去問を解いていきましょう。
過去問からの出題
第5回-7
第5回-7
FOV20cm、スライス厚 10mm、画像加算回数 2 回、バンド幅 100Hz/pixel の撮像条件を他条件は一定で、FOV40cm、スライス厚 5mm、画像加算回数 1 回、バンド幅200Hz/pixel に変更した。最初の条件の SNR を 100 とすると、変更後の SNR の数値はいくらか?
1. 50
2. 70.4
3. 70.9
4. 100
5. 141
解答
マトリクスは与えられていないため今回は省きます。
それぞれの値を代入すると、
変更前後でSNRは変わらないことがわかるので変更後も100となります。
第6回-18
第6回-18
基本条件:TR(繰り返し時間)= 4000ms 、TE(エコー収集時間)=100ms、加算回数=2回、マトリクス= 256×256、スライス数=10 枚、スライス厚=10mm、FOV = 300mm、バンド幅=130Hz / pixel、撮像シーケンスは spin echo 法を使用する。この条件で撮像した時の SNR について、正しい記述を選択して下さい。(正解3つ)
1.スライス厚を 20mm に変更したときの SNR は2倍になる。
2.バンド幅を 65Hz / pixel に変更したときの SNR は 1/2 になる。
3.バンド幅を 260Hz / pixel に変更したときの SNR は2倍になる。
4.FOV を 150mm に変更したときの SNR は基本条件の 1/4 の SN 比になる。
5.FOV を 150mm に変更したとき、スライス厚を 40mm すると同じ SNR になる。
解答
1.スライス厚 10mm → 20mm SNRは2倍になります。○
2.バンド幅 130Hz/pixel → 65Hz/pixel SNRは√(1/2)になります。
3.バンド幅 130Hz/pixel → 260Hz/pixel SNRは√2倍になります。
4.FOV 300mm → 150mm SNRは1/4になります。○
5.FOV 150mmにより1/4。スライス厚 40mmにすると4倍となり互いに打ち消し合いSNRは変わりません。○
第7回-8
第7回-8
上記の第6回-18と同じ問題です。
第8回-2
第8回-2
基本条件:TR(繰り返し時間)= 3000ms 、TE(エコー収集時間)=90ms、 加算回数= 2 回、マトリクス=256×256、スライス数=10 枚、スライス厚=10mm.FOV = 300mm、BW=130Hz / pixel、撮像シーケンスは Spin Echo 法を使用する。この条件で撮像した時の SNR について次の記述で正しいものを選択してください。(正解 2 つ)
1.加算回数を1回に変更したときの SNR は 1/√2 倍になる。
2.BW を 65Hz / pixel に変更したときの SNR は√2 倍になる。
3.スライス厚を 5mm に変更したときの SNR は 1/√2 倍になる。
4.FOV を 150mm に変更したときの SNR は基本条件の 1/2 の SN 比になる。
5.FOV を 150mm に変更したとき、スライス厚を 20mm すると同じ SNR になる。
解答
1.加算回数2回 → 1回 SNRは√(1/2)となります。○
2.BW130Hz/pixel → 65Hz/pixel SNRは√2倍となります。○
3.スライス厚10mm → 5mm SNRは1/2となります。
4.FOV300mm → 150mm SNRは1/4となる。
5.FOV150mmによりSNRは1/4。スライス厚20mmによりSNRは2倍となり、結果として元より1/2となります。
第9回-2
第9回-2
基本条件:TR=3000ms 、TE=90ms、加算回数=2 回、マトリクス=256×256、スラ イス数=10枚、スライス厚=10mm、FOV = 300mm、BW=130Hz/pixel、撮像シーケ ンスは Spin Echo 法を使用する。この条件で撮像した時の SNR について、次の記述で 正しいものを選択してください。(正解 2 つ)
1.加算回数を3回に変更したときの SNR は 1.225 倍になる。
2.BW を 65Hz / pixel に変更したときの SNR は√2 倍になる。
3.スライス厚を 5mm に変更したときの SNR は 1/√2 倍になる。
4.スライス数を 5 枚に変更したときの SNR は基本条件の 1/2 になる。
5.FOV を 150mm に変更したとき,スライス厚を 20mm すると同じ SNR になる。
解答
1.加算回数2回 → 3回 SNRは√(3/2)=1.225倍となります。○
2.BW130Hz/pixel → 65Hz/pixel SNRは√2倍となります。○
3.スライス厚10mm → 5mm SNRは1/2となります。
4.スライス数10枚 → 5枚 SNRは変わりません。
5.FOV150mmによりSNRは1/4。スライス厚20mmによりSNRは2倍となり、結果として元より1/2となります。
第10回-22
第10回-22
同じ大きさの FOV でマトリクス数を 512×512 から 256×256 に変更した場合、SNR は何倍になるか選択してください。ただしバンド幅は同じとする。
1. 2 倍
2. √2 倍
3. 4 倍
4. 4/√2 倍
5. 2/√2 倍
解答
4/√2 倍
第11回-49
第11回-49
同じマトリクス数で FOV100x100mm を 200×200mm にしてバンド幅を1/2 とした場合、SNR は何倍になるか選択してください。(正解 1 つ)
1.4×√2 倍
2.4×2 倍
3.4/√2 倍
4.2×2 倍
5.2/√2 倍
解答
4×√2 倍
第12回-6
第12回-6
同じ FOV でマトリクス数を 512×512 から 256×256 に変更して、受信バンド幅を 1/2 とした場合、SNR は何倍になるか選択して下さい。(正解 1 つ)
1. 4倍
2. 8倍
3. 4×√2倍
4. 4/√2倍
5. 2/√2倍
解答
4倍
第13回-7
第13回-7
同じ大きさの FOV でマトリクス数を 512×512 から 256×256 に変更し、受信バンド幅を 2 倍とした場合の SNR は何倍か。
1. 2 倍
2. 4 倍
3. 4× √2 倍
4. 4 / √2 倍
5. 2 / √2 倍
解答
2 倍
第10回から第13回までは同じ出題形式ですね。
第14回-3
第14回-3
NMR 信号の信号雑音比に関する正しい記述はどれか。2 つ選べ。
- T1 値の長い試料ほど大きくなる。
- T2 値の長い試料ほど大きくなる。
- エコー時間が長くなると大きくなる。
- 繰り返し時間が長くなると大きくなる。
- 1ch あたりの受信コイルの半径が長くなると大きくなる。
解答
1.×T1値とは縦磁化が63%まで回復する時間のこと、長いほど信号の回復は遅いためSNRは小さくなります。
2.○T2値とは横磁化が36%まで減衰する時間のこと、長いほど信号の減衰が遅いためSNRは大きくなります。
3.×TEは短いほど信号は大きくなります。
4.○TRは長いほど信号は大きくなります。
5.×コイル半径は小さいほど信号は大きくなります。
第14回でもSNRについて出題されましたがパラメータではありませんでしたので公式は使えなくなります。
こちらでは信号が強くなるとき弱くなるときを覚えておかなければなりません。
以上でSNRについての出題でした。
最後の問題を除けば全て公式で解ける問題です。そして計算ミスには注意です。
√ 内のマトリクスは計算忘れしやすいので慣れないうちは公式をちゃんと書き出して計算することをオススメします。
傾向としてはやはり計算問題の出題は少なくなるように感じます。もしくは何かヒネリを加えての出題になり今までの様に公式に当てはめるだけで解ける様な問題はなくなるのではないかと思います。
何がともあれ予想して対策するのは難しいのでまずは既存の問題を解ける様にしましょう。
まとめ
公式を覚える
計算ミスには要注意!特にルート内のマトリクスを忘れない。
出題
第5回-7,第6回-18,第7回-8,第8回-2,第9回-2,第10回-22,第11回-49,第12回-6,第13回-7,第14回-3
参考書籍
MR撮像技術学 P189
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