原理について続編です。今回は緩和についてなのですが「概要」と「メカニズム」に分ける予定なので結構短い記事となります。
過去の記事
①核種から飽和パルス
②磁化と信号取得
縦緩和
前回は90°パルスにより飽和され磁化が真横に倒されるところまででした。
今回はその後の動きである緩和についてです。
90°パルスによりα群はβ群へ遷移し両群の数は同数となりました。(飽和状態)
この時の縦磁化は0です。
次第にRFパルスにより与えられたエネルギーを放出しながらβ群からα群へと戻っていきます。無くなった縦磁化は次第に回復し元どおりとなり、これを緩和と言います。
今言ったのは縦磁化についてだったのですが、特にこれを縦緩和と呼びます。またの名をT1緩和ともいいます。
縦緩和の式とグラフを表示します。
M0は縦磁化の最大値、T1はその組織のもつ固有の値でT1値となります。90°パルス後は縦磁化は0となり、その後回復してM0へと戻ります。
ここでT1時間経った時の縦磁化を見てみます。
T1時間後の縦磁化は0.632M0となりましたが、これは縦磁化の最大値を100%とすると、T1時間後63.2%まで縦磁化が回復するということです。
このことから、例えば脂肪のT1値=300ms、肝臓のT1値=600ms とすると、、、
T1値の短い脂肪の方がより早く縦磁化が回復することがわかります。
ちなみにT1値はMRIの静磁場強度に左右され、磁場強度が高いほど延長してしまいます。
例)1.5T 肝臓=600ms、3T 肝臓=800ms ※これはおおよその値です。
縦緩和とは縦磁化の回復過程
T1値とは縦磁化が63%まで回復する時間
横緩和
RFパルスを照射すると次第に個々の磁気モーメントの位相が揃い横磁化が形成されます。その横磁化が前回のFIDを作っていました。
90°パルスの照射直後は完全に位相が揃い最大の横磁化となります。
ここから次第に位相はばらけていき最終的には完全に横磁化は消失してしまいます。これを横緩和、またの名をT2緩和と言います。
式とグラフで表すと以下となります。
縦緩和とは逆で、90°パルス照射直後t=0では最大の磁化M0を持っていますが、最終的に磁化は0になります。
ここでT2時間経った時の縦磁化を見てみます。
T2時間後の横磁化は0.368M0となりましたが、これはRF照射直後を100%の横磁化とすると、T2時間後36.8%まで横磁化が減衰したということです。
このことから、例えば脳白質のT2値=100ms、脳脊髄液のT2値=300ms とすると、、、
T2値の短い白質の方がより早く横磁化が減衰することがわかります。
T1値は磁場強度が高いほど延長しましたが、T2値は静磁場強度が高くなっても大きくなるものと小さくなるものがあり傾向はありません。
横緩和とは横磁化の減衰過程
T2値とは横磁化が36%まで減衰する時間
過去問
第7回-4
次の記述について正しい文章を選択して下さい.(正解 2 つ)
1.T1 は縦磁化が 36.8%まで回復する時間である。
2.T1 は磁場強度が高くなるほど短くなる。
3.T2 は横磁化が 63.2%まで減衰する時間である。
4.磁場の不均一は T2(T2*)を短縮させる。
5.MRI造影剤はT1 およびT2を変化させる。
まとめ
90°パルス後
①縦緩和(T1緩和)により縦磁化の回復が生じる
②横緩和(T2緩和)により横磁化の減衰が生じる
縦緩和
①MZ=M0 [1-exp(-t/T1 )]
②T1値とは縦磁化が63%まで回復する時間
③T1値が小さいほど早く回復する
横緩和
①Mxy=M0 exp(-t/T2 )
②T2値とは横磁化が36%まで減衰する時間
③T2値が短いほど早く減衰する
*イチローさん高い、手にサムギョプサル*
T1 63% 縦磁化 回復、T2 36% 減衰 横磁化
いつも無理やりですが今回もなかなかなゴロです。
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