多発性硬化症(multiple sclerosis)[用語]

目次

用語

中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患
時間的・空間的に多発する特徴がある

解説

原因

原因はいまだ明らかとなっていない。

病巣にリンパ球やマクロファージの浸潤があり、自己免疫機序を介した炎症により脱髄が起こると考えられる。

脱髄:上記の髄鞘部分が破壊され、正常な情報伝達ができなくなり麻痺などを引き起こす。

年齢・性別

30歳前後に多く、ピークは20〜30歳。

男性より女性に多い。

※認定試験18回-1でも「20歳の女性患者」とされていましたね。

症状

視力障害、四肢の麻痺、感覚障害など

Uhthoff(ウートフ)徴候:MSに特徴的であり、体温の上昇に伴って神経症状が悪化し、体温の低下により元に戻る。

認定試験でのポイント

MRIの役割

病巣の存在を視覚的に確認できる。病巣の空間的・時間的多発を示す。

鑑別疾患の除外に有用。

経過観察にも使用される。

MRIによる空間的多発の証明

脳室周囲、皮質直下、テント下、脊髄のうち少なくとも2つの領域にT2病変が1個以上ある。

MRIによる時間的多発の証明

無症候性のガドリニウム造影病変と無症候性の非造影病変が同時に存在する。
基準となる時点のMRIに比べて、その後に新たに出現した症候性または無症侯性のT2病変かガドリニウム造影病変がある。
 

画像所見

(※画像は絵であり実画像ではありませんのでご了承ください)

Ovoid lesion

FLAIR Ax

側脳室周囲を中心とした大脳白質に生じる円形や卵円形の深部白質病変。長軸が側脳室壁に垂直。

静脈周囲の炎症性病変を反映している。

Dawson’s fingerとも呼ばれ、FLAIRのSagittalで指のように見える。

FLAIR Sag

Central vein sign

SWI Ax

白質病変は静脈に沿って広がるので、白質病変中心に静脈が認められることがある。

磁化率強調画像で描出されやすい。

Callosal-septal interface lesion

FLAIR Sag

脳室に対して垂直、放射状に脳梁内に認める病変。

脳梁部は虚血に強く、脳血管障害や血管炎では障害されにくい部位なため特異度が高い。また感度も高い。

FLAIRのSagittalが有用。

脳梁の小静脈周囲の炎症による。

Juxtacortical lesion / Isolated U-fiber lesion

FLAIR Ax

皮質やU-fiber領域を含む皮質下白質の病変。

約半数の症例で認められる。

U-fiberは虚血病変では障害されにくく(動脈が皮質側からと白質深部からの二重支配となっているため)、多発性硬化症では比較的特異的な病変。(Isolated U-fiber lesion)

静脈周囲の炎症を反映している。

U-fiber[用語]

T1-black hole

T1WI Ax

急性期の病変では浮腫や脱髄、組織破壊を反映しT1WIで低信号となる。
→炎症の減弱とともに低信号は消失する。

慢性期の病変では強い組織破壊を反映し、低信号は持続的に認められる。
→T1-black holeはこれを言う。

Enhancing lesion

CE T1WI Ax

新しい病変や活動性の高い病変では血液脳関門の破綻により造影効果を認める。

結節状、斑状、リング状の形態を示す。

リング状造影効果について、灰白質に接する部分の造影効果が認められずリング状の造影が途切れることがある。これをopen-ring signという。

脱髄性疾患に特徴的。

Tumefactive demyelinating lesion:TDL

2 cm以上の腫瘤様脱髄病変(TDL)。MSに限らず脱髄性疾患では腫瘤状の形態をとることがある。

浮腫性変化やmass effectは少なく、リング状造影効果を示すことが多い。

open-ring signが特徴的。

Spinal cord lesion

T2WI Sag

脊髄の炎症であり、この脊髄病変の2/3は頭蓋内病変を伴い、1/3は脊髄のみ。

T2WI高信号、T1WIで等〜低信号。

活動性病変では造影効果を認める。

MSの病変範囲は、Saggital:上下2椎体以下、Axial:脊髄の半分以下とされ、3椎体以上となることは稀。

後索や側索に多い。また頸髄病変が多いとされている。

 

ごろ

納涼祭中のディズニーランドの中心からブラックホールが発生し、スピンするUFOが出現。これ覚えんのきつい。
納涼(脳梁)ーCallosal-septal interface lesion
ディズニーランドーTumefactive demyelinating lesion:TDL
中心ーCentral vein sign
ブラックホールーT1-black hole
スピンーSpinal cord lesion
UFOーIsolated U-fiber lesion
覚ーOvoid lesion
えんーEnhancing lesion

かなり無理ありますが僕の限界です。

過去問

18-問題 1 脊髄の多発性硬化症が疑われている 20 歳の女性患者の頸椎・頚髄 MRI 横断像の撮像について、若手の技師に聞かれた。最も望ましいアドバイスを選べ。


1. 『T2 強調像を撮像してください』
2. 『T2*強調像を撮像してください』
3. 『FLAIR 像を必ず撮像してください』
4. 『椎間板ごとにそれに平行で撮像面を設定してください』
5. 『椎間板の部分を細かく(狭い間隔で)3枚は撮像してください』

1.○多発性硬化症ではT2で脊髄内に高信号病変が見られることがある。MRI検査では病変部位の位置関係やアーチファクトなどの否定のためにも2断面の撮像があるべきである。頚椎・頸髄のMRI検査としてT2 Sag、T1 Sagを撮像すると考えられその上でAxをどうするかと仮定すると、なるべく簡潔に(余計なことはせず)情報のある撮像をするべきと思われる。そのためT2 Axを撮像するべき。
2.×T2*でMSに有用かは分からないがT2 Axで十分。フローアーチファクトは軽減する。
3.×FLAIRはMSに有用かもしれないが必ずしも必要とは言い難い。また、Axなので。
4.×椎間板に平行である必要はない。
5.×椎間板をthin sliceで撮像する必要はない。

17-1)18-1と同じ問題

16-26)多発性硬化症の MRI 所見として正しいのはどれか。2 つ選べ。 

1. Ovoid lesion
2. Dural tail sign
3. Open-ring sign
4. Eye-of-tiger sign
5. Salt and pepper sign

1.○脳室周囲や皮質近傍に散在する卵円形病変
2.×髄膜腫
3.○リング状増強効果の途中が途切れている
4.×パントテン酸キナーゼ関連神経変性症(PKAN)の鉄代謝異常により大脳基底核に鉄沈着が見られる
5.×脳挫傷、CTにおいて浮腫による低吸収と出血の高吸収が混在
多発性硬化症(MS)のその他所見
T1 black hole・・・脱髄などによりT1で低信号
Spinal cord lesion・・・脊髄炎症
Callosal-septal interface lesion/ subcallosal striation・・・脳室壁と垂直方向に広がる脳梁内病変FLAIRで高信号
Enhancing lesion造影効果・・・BBBが破綻し造影効果がある
Isolated U-fiber lesion/juxtacortical lesion・・・皮質下白質(U fiber領域)に沿って広がる病変FLAIRで高信号
Tumefactive MS lesion・・・脳腫瘍のように見える

14-25)ProtonMRspectroscopy(MRS)に関する正しい記述はどれか。2つ選べ。

  1. 肝性脳症はグルタミンが低下する。
  2. 脳虚血は乳酸(lactate) が低下する。
  3. 多発性硬化症はコリン(cho)が上昇する。
  4. 放射線壊死のような病態では脂質(lipid)が上昇する。
  5. びまん性軸索損傷は NAA(N-acetyl-aspartate)が上昇する。

1.×上昇
2.×上昇
3.○
4.○
5.×低下
解説(MRSピーク)

13-17) 脳疾患の拡散強調像の所見に関する正しい記述はどれか。(正解 3 つ)

1. 出血性脳梗塞では、高信号となることがある。
2. 低悪性度の脳腫瘍では、高信号となることがある。
3. 脳膿瘍では、多くの場合脳脊髄液と同程度の信号強度を呈する。
4. 多発性硬化症では高信号となっている部位のみに炎症反応がある。
5. クロイツフェルトヤコブ病では、脳皮質のみに高信号を認める症例がある。

1.○
2.○
3.×脳膿瘍は高信号。CSFは低信号。
4.×多発性硬化症では髄鞘が炎症を起こし脱髄となってDWIで高信号が観察される。高信号部位のみというのが自信なし。
5.○
解説(DWI所見)

13-19) Proton MR spectroscopy(MRS)に関する正しい記述はどれか。(正解 2 つ)

1. 乳酸(lactate) は虚血で上昇する。
2. コリン(Cho)は多発性硬化症で上昇する。
3. 放射線壊死のような病態では脂質(lipid)が低下する。
4. Cho/NAA の上昇は悪性腫瘍に高い感度と特異度を示す。
5. NAA(N-acetyl-aspartate)はびまん性軸索損傷で上昇する。

1.○
2.○Cho、Cr、mInsなどは上昇、NAAは低下、慢性期ではmInsとNAA以外正常化。
3.×ピークが観察される。
4.×感度は高いが特異度は低い。
5.×低下。
解説(MRSピーク)

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次