【MRI認定 14】スライス厚測定について

スライス厚測定の問題は2~3年に1問程度の出題頻度かと思います。

昔は測定方法について出題されることがほとんどでしたが、最近は図を用いて出題されております。

NEMAとIECがありますが、どちらもほとんど同じですので認定機構の性能評価試験と過去問に則って解説していきます。

目次

撮像条件

ファントム

①対向くさびファントム(ウェッジ法) こちらの方が望ましい

②傾斜板ファントム(スラブ法)

ファントムを持ち合わせていない場合は自作でも構いません。

撮像条件

シーケンス

シーケンス:SE法
TR:T1値 × 3 以上 
TE:一般的に臨床に使用される範囲 
スライス厚:一般的に臨床に使用される範囲 
ギャップ:予想される半値幅の2倍以上
スライス:マルチスライス、少なくとも3スライス
SNR:十分なSNRを担保すること

測定方法

まずは簡単な原理

スライス厚の測定って初めてだとどうやるかあまり検討がつかないですよね。

なのでとりあえずとても簡単に説明します。

 

水の入ったファントム内に楔形の模型があるとします。(模型は30°、60°、90°の直角三角形)

これをスライス厚不明で1断面撮影したとします。(水平断)

撮影された底辺の部分が1.73cmだったとします。

これについて三角関数を用いて、スライス厚xを算出します。

直角三角形で30°とわかっているので、、

これでスライス厚xは1cmだったということがわかります。これがいわゆる実行スライス厚となります。

タンジェントは関数電卓かネットで「tan(角度)」で調べるとすぐわかります。

 

底辺を調べる方法を飛ばしましたが、以下となります。

撮影された画像から信号値をプロットします。ファントム内の水は高信号、楔形の模型はほぼ無信号であり、信号値をプロットすると以下のようになります。

以上がスライス厚測定のざっくりした説明となります。※ほんとは半値幅を算出して底辺とします。

実際にはスライス厚は装置で設定するのでもちろん既知であり、性能評価試験では設定したスライス厚と実行スライス厚との違いを比較検討する形となります。

測定方法

対向楔ファントム(ウェッジ)を用いて説明します。

底辺と平行となるように撮影スライスを設定します。

撮影された画像の傾斜部分から信号プロファイル(白四角)を取得します。

次に隣り合うピクセルの差分をプロットし半値幅(FWHM)を算出します。

ウェッジの角度をαとすると簡単な説明でも述べたように、スライス厚は以下となります。

スライス厚=FWHM×tan(α)

角度補正

上記の方法から算出されたスライス厚はあくまで設置した傾きに誤差が全くなく、床と完全に平行に設置されたことが前提となっています。

しかし実際に傾きなく設置することは難しく回転補正(傾きの補正)が必要となります。

角度θ傾いて設置された場合を考えてみます。

その時測定して算出した半値幅w1は角度α-θのウェッジを撮影したことに等しくなります。

同じく半値幅w2は角度α+θのウェッジを撮影したことに等しくなります。

以上より

この補正を行うため2対のウェッジを用いて測定を行うのです。

まとめ

シーケンス:SE法
TR:T1値 × 3 以上 
TE:一般的に臨床に使用される範囲 
スライス厚:一般的に臨床に使用される範囲 
スライス:マルチスライス、少なくとも3スライス
SNR:十分なSNRを担保すること→FOVやマトリクスで調節するのではなく加算回数を用いる

スライス厚=FWHM×tan(α)

2対のウェッジを用いる理由は回転補正を行うため

過去問からの出題

18-問題25 図に2つのウェッジを重ねたスライス厚測定用ファントムの撮像方法を示す。正しいのはどれか。2 つ選べ。

日本磁気共鳴専門技術者認定機構より

1. T=W1×tan(α+θ)である。
2. ウェッジの傾斜角αは 5~15°とする。
3. W1 と W2 の差が大きくなればθは小さくなる。
4. ウェッジが 2 つあるのは磁場不均一性を補正するためである。
5. マトリックス数を固定したまま T を薄くする場合は FOV を広げなければならない。

1.○ 16-24を参考
2.○
3.×ファントムの回転角度θが0になるとW1=W2となる。
4.×ファントムの回転補正
5.×

16-24)2つのウェッジを重ねたスライス厚測定用ファントムの撮像方法を図に示す。次の文章でア~オに当てはまる語句の組み合わせで正しいのはどれか。

「角度Aは( ア )となることから、スライス厚TはW2を用いて( イ )と表される。同様にTはW1を用いて( ウ )とも表される。W1とW2の関係から回転角度θを求めることが可能で、仮に( エ )となった場合、回転角度が 0 度になるため回転の補正が必要なくなる。αが 25 度、θが 5 度、W1 が 10mm の場合、スライス厚Tは約( オ )となる」

1α-θW2×cos(α-θ)W1×cos(α+θ)W1=W28.7mm
2α+θW2×cos(α+θ)W1×cos(α-θ)2W1=W29.4mm
3α-θW2×tan(α-θ)W1×tan(α+θ)W1=W25.8mm
4α+θW2×tan(α+θ)W1×tan(α-θ)2W1=W23.6mm
5α-θW2×sin(α-θ)W1×sin(α+θ)W1=W25.0mm

1.2.3.○4.5.
ア:ファントムの回転が無く回転角度θが0の場合、角度AはA=αである。ファントムが回転しθが増えるほどAはθだけ小さくなるのでA=α-θ。
イ:tan(α-θ)=T/W2 T=W2×tan(α-θ)
ウ:W1の角度を仮に角度Bとすると、回転角度θが0の時はB=α、しかしAとは逆に回転角度θが増すほどθだけ大きくなるのでB=α+θ。
そしてtan(α+θ)=T/W1 T=W1×tan(α+θ)
エ:回転角度が0度の時のW1とW2の関係を問われているので、W1=W2
オ:T=W1×tan(α+θ)より T=10×tan30°=10×1/√3=5.8

14-14)NEMAにおけるスライス厚測定に関する正しい記述はどれか。2つ選べ。

  1. 高速 SE 法が望ましい。
  2. シングルスライスで撮像する。
  3. TR は信号発生物質の T1 値の 3 倍以上にする。
  4. ウエッジ法のスライス厚はFWHM × tan 𝛼である。
  5. ウエッジファントムが 2 つあるのは磁場不均一の補正のためである。

1.×SE法
2.×マルチスライス、少なくとも3スライス。
3.○
4.○
5.×セットアップ時の回転補正。

10-34)性能や精度に関連する事項について、正しい文章を選択してください。(正解2つ)

1.受信バンド幅が狭いほど SNR は大きくなる。
2.画像の均一性には、傾斜磁場の直線性が大きく影響する。
3.画像の幾何学的なひずみと静磁場の不均一性は大きく関係する。
4.不変性試験は、不具合が起きた場合に問題箇所を特定するために行う。
5.スライス厚の評価には、信号が発生しない材料の大きさが異なるピンやプレートをいくつか並べたファントムを使用するのが一般的である。

1.○
2.×RFや正磁場不均一などが影響する。傾斜磁場の直線性が影響するのは画像歪み(空間直線性)。
3.○
4.×機器の性能が設定基準を満足することを確認するため。機器の構成要素の性能変化を早期に発見するために行う。
5.×スライス厚にはくさび板などを用いる。ピンを用いるのは歪み試験。
解説(SNR測定)解説(均一性試験)解説(スライス測定)解説(歪み試験)

7-27)スライス厚測定について、正しい文章を選択してください(正解2つ) 

1.ウエッジ法で、2対のウエッジを使用するのは、画像歪みを補正するためである。
2.スライス厚の測定は、2対のウエッジか傾斜板を使用するのが、一般的である。
3.スライス厚に影響を与える因子として、傾斜磁場の不均一、RF パルスの不均一、静磁場の不均一などがあげられる。
4.基本的にウエッジの角度を α とした場合、スライス厚はスライスプロファイルの微分の半値幅 x sin(α)で求められる。
5.ウエッジの撮像は、大きな FOV と少ないマトリクス数で、高い SNR の画像を得る事が重要である。

1.×回転補正
2.○
3.○
4.× 半値幅×tan(α)
5.×大きなFOV少ないマトリクス数では分解能が低下してしまうのでよろしくない。SNRは加算回数の増加などで補う。

6-(32) スライス厚測定について、正しい文章を選択してください。(正解2つ) 

1.ウエッジ法で、2対のウエッジを使用するのは、画像歪みを補正するためである。
2.スライス厚の測定は、2対のウエッジか傾斜板を使用するのが、一般的である。
3.スライス厚に影響を与える因子として、傾斜磁場の不均一、RFパルスの不均一、静磁場の不均一などがあげられる。
4.基本的にウエッジの角度を α とした場合、スライス厚はスライスプロファイルの微分の半値幅 x sin(α)で求められる。
5.ウエッジの撮像は、大きな FOV と少ないマトリクス数で、高い SNR の画像を得る事が重要である。

a.×回転補正
b.○
c.○
d.× 半値幅×tan(α)
e.×大きなFOV少ないマトリクス数では分解能が低下してしまうのでよろしくない。SNRは加算回数の増加などで補う。

5-(38) スライス厚測定について、正しい文章を解答して下さい。

a. ウエッジ法で、2対のウエッジを使用するのは、画像歪みを補正するためである。
b. ウエッジ法で、2対のウエッジを使用するのは、磁場の不均一を補正するためである。
c. スライス厚に影響を与える因子として、傾斜磁場の不均一、RF パルスの不均一、 静磁場の不均一などがあげられる。
d. 基本的にウエッジの角度をαとした場合、スライス厚はスライスプロファイルの微分の半値幅 x sin(α)で求められる。
e. ウエッジの撮像は、大きな FOV と少ないマトリクス数で、高い SNR の画像を得る事が重要である。

a.×傾きによる誤差の補正(回転補正)
b.×
c.○
d.× 半値幅×tan(α)
e.×大きなFOV少ないマトリクス数では分解能が低下してしまうのでよろしくない。SNRは加算回数の増加などで補う。

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