MRIにおける灌流画像は造影剤を使う方法と使わない方法があります。
造影剤を使うものはDSC、DCEがあり、造影剤を使わないものはASLがあります。
そしてこれらから算出されたデータよりMTT、rCBF、rCBVなどの評価法があり今回はこちらについて触れていきます。過去問でもたまに出題されていますが第17回では特に詳しく問われていたためチェックしておくべきかと思います。
まとめなのであまり深い内容ではありません。
各パラメーター
TTP ピーク到達時間 Time to peak
造影剤ボーラスのピーク到達時間。
TTP延長は灌流異常に最も鋭敏で、TTP延長領域は灌流異常の最大範囲を表す。TTPのみではpenumbraの評価はできません。
MTT 平均通過時間mean transit time
脳組織を流れる血液の平均通過時間。MTTが短ければ組織内を血液が早く通過していることとなります。
MTTの延長も循環予備能による代償を反映し、灌流異常の最大範囲を表す。MTTのみではpenumbraの評価はできません。
MTT = 血液量V / 血流量F
rCBF cerebral blood flow
脳組織の血流で単位はml/100mg/minが用いられます。
rCBFの著名な低下領域は最終梗塞に至る。rCBVが維持or上昇、rCBFの低下が軽度の領域に可逆的なpenumbraの可能性があります。
rCBV cerebral blood volume
脳組織の血液量で単位はml/100mgが用いられます。
rCBVの低下領域は最終梗塞に至ります。
虚血初期段階でrCBVは増加します。
虚血の段階によるパラメータの変動
脳の灌流圧が下がると血液が行き届きにくくなります。さらに灌流圧が低下すると脳へ酸素が運べなくなりエネルギー不足となるため脳細胞が死滅します。この梗塞までに各パラメータはどのように変動しているのかを解説します。
① 正常〜脳灌流圧が軽度低下では①の青い段階で始めにrCBVが上昇します。これは脳灌流圧が低下しても血流を正常に保とうとし毛細血管が拡張するためです。これを循環予備能と言います。この時点ではrCBV、TPP、MTTが上昇します。脳血流量は保たれるのでrCBFに変動はありません。
② さらに脳灌流圧が下がると②乏血という状態となり緑の段階となります。ここで循環予備能は限界に達していきついにはrCBFが低下します。血流が下がると酸素不足となりますが、ここで脳組織は酸素の取り込みを増やし酸素摂取率が上がります(代謝予備能)。そのため酸素消費量は正常に保たれます。
③ さらに灌流圧が低下すると③虚血という段階となりいわゆるペナンブラの部分となります。代謝予備能も限界を迎えると酸素消費量が低下します。ここでは神経細胞は正常に電気活動を行えなくなります。しかしイオンチャネルは保たれており血流の改善により回復する可能性があります。
④ 最終的には梗塞となります。酸素不足となり脳細胞のATP供給が停止し、細胞膜のイオンチャネルの破綻により細胞性浮腫となります。rCBV、rCBFが著名に低下。DWIで高信号となります。
過去問
第7回-5
還流 MRI の記述について正しい文章を選択して下さい。(正解 3 つ)
1.還流(perfusion)とは「毛細血管レベルの血流動態」を指す。
2.造影剤を使用して EPI 法で撮影する一般的な方法では、高濃度の造影剤の通過による T1 短縮効果による信号上昇を継時的に観察する。
3.脳血流量(rCBF)は脳血液量(rCBV)と平均通過時間(MTT)より次式で求めることができる。rCBF = rCBV / MTT
4.ASL(arterial spin labeling)法とは造影剤を使用しない還流 MRI の総称で、FAIR法や CASL 法などの手法がある。
5.ASL 法で血管内のスピンを反転(ラベル)してから撮影までの delay 時間(TI)は 1.5 テスラでは 1.5 秒程度、3 テスラでは 3 秒程度が標準的である。
第7回-36
超急性期の脳梗塞を検査するうえで、正しい文章を選択してください(正解は 3 つ)
1.虚血による細胞外液浮腫を捉えるために拡散強調画像を撮影する。
2.超急性期の脳梗塞を否定するために FLAIR 法を撮影する場合がある。
3.ADC map は通常は b 値 1000mm2/sec の画像のみで作成できる。
4.造影剤を用いた灌流画像を撮影して、拡散強調画像の病変範囲を比較することがある。
5.拡散強調画像で脳梗塞を認めることができなかった場合、超急性期の脳梗塞を完全に否定することができる。
第8回-5
還流 MRI の記述について正しい文章を選択してください。(正解 2 つ)
1.Gd 造影剤を用いた場合では T1 短縮を無視できるシーケンスを用いる。
2.ASL(arterial spin labeling)法は CBV(Cerebral Blood Volume)が算出できる。
3.ASL(arterial spin labeling)法は領域選択的傾斜磁場を用い脳血流量の評価ができる。
4.脳血流量(rCBF)は脳血液量(rCBV)と平均通過時間(MTT)から次式で求めることができる。
rCBF = rCBV / MTT
5.ASL 法で血管内のスピンを反転(ラベル)してから撮影までの delay 時間(TI)は1.5 T では 1.5 秒程度、3.0 T では 3 秒程度が標準的である。
第16回-35
DSC(dynamic susceptibility contrast)灌流画像について正しいのはどれか。2つ選べ。
1. Ktrance が計測できる
2. エコープラナー法が用いられる
3. ガドリニウム造影剤の T1 短縮効果を利用する
4. Deconvolution 法では動脈入力関数(AIF)の設定が必要である
5. 組織血液量(V)は平均通過時間(MTT)を組織血流量(F)で除した値である
第17回-39
脳の dynamic susceptibility contrast(DSC)について正しいものを選べ。ADC:見かけの拡散係数、rCBF:局所脳血流量、rCBV:局所脳血液量、MTT:平均通過時間、TTP:到達時間
1. MTT 延長領域は灌流異常の最小範囲を表す。
2. TTP 延長領域は灌流異常の最小範囲を表す。
3. rCBV の低下と rCBF の著明な上昇領域は最終梗塞に至る。
4. DSC の評価方法には、ADC、rCBF、rCBV、MTT、TTP がある。
5. rCBV の維持または上昇と rCBF の低下が軽度の領域に、ペナンブラの存在が示唆される。
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