【MRI認定 48】胎盤

過去問ではおそらく1問しか出題されておらず試験対策にはあまりならないかもしれませんが、個人的に調べる機会があったので記事にしました。

目次

胎盤について

前置胎盤

子宮下部に胎盤が形成され内子宮口にかかる状態です。

正常であれば内子宮口にはかぶらないため、出産時に赤ちゃんが先に出てきて後から胎盤が出てきます。しかし前置胎盤では、胎盤が先に出てきてしまい胎盤からの栄養が途切れて赤ちゃんは呼吸が出来ない状態となってしまいます。また大量出血のリスクもあります。

超音波検査で診断できますが、十分な情報が得られない場合はMRIで評価します。

癒着胎盤

胎盤は脱落膜、絨毛膜、羊膜からなります。

脱落膜は絨毛の子宮筋層内への侵入を防ぐ働きをし、分娩後は脱落膜とともに胎盤が容易に剝離されて娩出されます。

しかし何らかの原因で子宮の脱落膜が欠損や菲薄化しているとき、絨毛組織は直接子宮筋層内に侵入して癒着胎盤となります。分娩しても胎盤が剥がれてこなく、無理に剥離すると大量出血を引き起こします。

帝王切開、子宮筋腫核出術、子宮内手術、子宮内膜炎などは子宮内膜が損傷を受ける可能性があり脱落膜が欠損し癒着胎盤のリスクを高めます。そのため帝王切開を行うほど、後の妊娠で癒着胎盤となる可能性があります。

また、子宮下部では脱落膜が薄いため、前置胎盤では癒着胎盤となる可能性が高くなります。

胎盤MRI撮影の意義

たいていの胎盤病変は超音波検査で発見されるため、超音波で充分な情報が得られない場合やより正確な評価が必要な場合にMRIを撮像することとなります。

癒着胎盤に対するMRIと超音波の診断能に大差はないとの報告がありますが、超音波では子宮後壁付着胎盤の評価が困難な場合があります。超音波で診断がつかない場合にMRIを追加することで診断能が向上する可能性があります。

後に述べますが、MRIで癒着胎盤を示唆する所見としては「胎盤付着部の筋層の菲薄化」「T2 強調画像での胎盤内低信号域」などいくつかの有用性が報告されています。

また、胎盤機能低下の症例に対する超音波の診断能は良いものではなく、MRIの拡散強調画像やperfusionが診断向上に寄与する可能性があるとみられています。

胎盤MRIの標準的撮像法

装置はSARや磁場の影響を考慮し3Tよりは1.5Tで撮像すべきです。

可能であれば背臥位にて撮像しますが、妊婦さんは背臥位になると下大静脈を圧迫してしまい『仰臥位低血圧症候群』を誘発する恐れがあります。この場合は無理に背臥位にはさせず側臥位で対応し、下大静脈を考慮すると左側臥位の方が有効です。

※仰臥位低血圧症候群:下大静脈が圧迫されると右心房への静脈還流量が減少するため、心拍出量が減少し低血圧となるもの。一時的なもので圧迫を解消すると回復します。

① T2強調画像 (single shot FSE)

横断、矢状断、冠状断の3方向

胎盤の形態評価や病変の検出に用います。

② T1強調画像 (GRE)

横断、矢状断、冠状断のいずれか1方向

胎盤や頸管内などの出血、血腫の評価をします。

③ SSFP (trueFISPやFIESTA)

横断、矢状断、冠状断のいずれか1方向

癒着胎盤の診断においてT2強調画像に情報を付加します。

MRIでの所見

前置胎盤

MRIは胎盤および内子宮口の位置関係を客観的に描出することができ、超音波の届き難い後壁付着例でも有用性が高いと言われています。

前置胎盤であれば内子宮口に胎盤がかかっているかどうかを見ることとなります。

内子宮口の全部を覆う場合は『全前置胎盤』、一部を覆う場合は『部分前置胎盤』、辺縁に達する場合は『辺縁前置胎盤』といいます。

これら評価をするためにも、撮像では内子宮口を通るようなスライス設定をするように気を付けるべきと思います。

癒着胎盤

癒着胎盤は、胎盤の絨毛が子宮筋層へどの程度侵入しているかにより3種に分類されます。

嵌入胎盤や穿通胎盤では分娩後に子宮を摘出しなければならない場合が多いと言われています。

 

癒着胎盤を示唆する所見は多数あります。

MRIにより胎盤付着部の途絶や菲薄化が観察されれば癒着胎盤の可能性があり、胎盤外方の膀胱へのbulging(膨隆)がみられます。

また、癒着胎盤では異常血管の増生・拡張が見られることがあります。FSEによるT2WIでは血管信号は低信号となり、SSFPでは高信号となるためAbnormal placental vascularityを確認することが出来ます。

T2 dark bandはフィブリン沈着によりT2WIで帯状の低信号となる所見ですが、SSFPでも低信号となります。このようにSSFPはT2WIだけでは判別し難い所見に付加情報を与えることができます。

 



まとめ

前置胎盤は内子宮口に胎盤がかかる状態。子宮下部では脱落膜が薄いため、前置胎盤では癒着胎盤となる可能性が高い。

癒着胎盤は脱落膜が欠損や菲薄化したところで絨毛組織が子宮筋層に侵入した状態。分娩時に胎盤が剥がれにくく大量出血のリスクがある。

MRIでは基本的にsingle shot FSEのT2GREのT1SSFPを撮像する。

癒着胎盤では胎盤の膨隆陥凹信号の不均一T2 dark band異常血管増成が見られる。

過去問からの出題

第13回-15
前置胎盤の MRI 検査に関する正しい記述はどれか。(正解 2 つ)

1. EPI を使用し動きに対応する。
2. 癒着胎盤を合併することがある。
3. T1 dark band がみられることがある。
4. 血管増生や血栓などがみられることがある。
5. Steady state free precession にて低信号を確認する。

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