MRCPについてですが、原理というより知識として知っているかがカギとなる問題です。
問題
MRCPの撮像技術について、正しい文章を解答して下さい。
a.エコースペースの短縮は蠕動運動によるアーチファクト抑制に効果がある。
b.消化管信号の抑制に経口造影剤を使用した際、T1 強調画像では motion artifact が顕著になる可能性がある。
c.白内障、前立腺肥大、不整脈の患者には、鎮痙剤(ブスコパン)の使用はできない。
d.pneumobilia の診断には、横断像の撮像が有用である。
e.MRCP 撮像において single shot 系の高速 SE シーケンスを用いた場合、ハーフフーリエ法を用いないほうが、用いた場合と比べ遅い血流が描出されてしまう。
解答
a,b,d
解説
問a
エコースペースは短縮するほどモーションアーチファクトを低減できるので、蠕動運動によるアーチファクト抑制につながります。
問b
MRCPはT2WIなのですが、普段撮像するT2WIよりもTRとTEをもっと長くして撮像します。そうすると自由水だけが高信号として残り、その他の組織は無信号として描出されるため結果として胆嚢や胆管、膵管などがコントラストよく描出されることとなります。このTR、TEを長くしT2の影響を強くしたものをheavy T2WIと言います。
しかし観察したい臓器だけ描出できれば良いのですが腹部の撮影では胃や腸管に残る液体も同時に高信号として描出されてしまいます。
ここで経口造影剤の登場です。
経口造影剤はT2短縮効果があるため信号が減衰しやすくなりT2WIでは黒くなります。そのためこの造影剤を飲んでもらうことにより消化管信号を抑制させられるのです。
しかしここでもう一つ問題が。
この経口造影剤はT2短縮作用の他にT1短縮作用も兼ねているため、T1WIを撮像すると高信号として描出されるのです。
普段T1WIでは消化管の液体は低信号のはずですが、経口造影剤を飲んだ後は高信号となります。
要するに、呼吸や蠕動運動などで消化管が動くと高信号のものが動くこととなりモーションアーチファクトの原因となりうるのです。
ちなみにこちらが経口造影剤です。
フェリセルツ(クエン酸鉄アンモニウム製剤)
ボースデル(塩化マンガン(Ⅱ)四水和物)
問c
ブスコパンは蠕動運動を抑えるなどの効果があり、腹部検査の前処置として用いられます。
薬剤投与を行うため気をつけなければならないのが禁忌や原則禁忌です。
筋注や静脈内投与のため看護師さんに行ってもらいますが検査担当の技師も確認しなければなりません。
こちらは添付文章の引用になります。
禁忌
・出血性大腸炎の患者
[腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な細菌性下痢患者では、症状の悪化、治療期間の延長をきたすおそれがある。]
・閉塞隅角緑内障の患者
[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]
・前立腺肥大による排尿障害のある患者
[更に尿を出にくくすることがある。]
・重篤な心疾患のある患者
[心拍数を増加させ、症状を悪化させるおそれがある。]
・麻痺性イレウスの患者
[消化管運動を抑制し、症状を悪化させるおそれがある。]
・本剤に対し過敏症の既往歴のある患者
原則禁忌
・細菌性下痢患者
[治療期間の延長をきたすおそれがある。]
長くなって読むのがしんどいですよね。
まとめると
出血性大腸炎、緑内障、前立腺肥大症、心疾患、麻痺性イレウス、細菌性下痢
カルテや問診でこの言葉を見かけたら一度確認しましょう。
また慎重投与として潰瘍性大腸炎、甲状腺機能亢進症、うっ血性心不全、不整脈、高温環境にある患者などもあります。
問d
ニューモビリア(pneumobilia)
胆管内に空気が入った状態のことです。
原因として胆嚢摘出術後またはそれに伴って胆汁漏などが起こると胆管内ガスが認められることがあります。
胆汁は肝臓の抹消から肝門部に向かって流れるため肝門部を中心に認められる傾向があります。
胆管結石と誤認しやすくAxで撮影すると石は沈み空気は浮くことから区別できます。
問e
ハーフフーリエ法はk空間のエルミート対称を利用した方法でk空間の半分とちょっとを実測し画像を作ります。
撮像時間が約半分になりますがS/Nが落ちてしまいます。
またETS(echo train space)が短くある程度の血流であれば描出されます。
余談ですがこの原理を利用したFBIという撮像法があります。
まとめ
MRCPについてですが臨床にも活用できる問題でした。
解答に関して、今まで培った知識や書籍・文献を参考に導出したもので、私の認識不足により間違っている可能性もございます。ご理解いただいた上でご参考ください。
MRI認定試験の合格を目指している方のお手伝いができればと思っています。
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