MRI認定試験過去問解説 第5回-6【緩和】

今回は主に緩和についてです。

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問題

磁気共鳴について、正しい文章を解答して下さい。


a. 1.5T の MRI 装置において、90°パルスの印加時間が 15ms であった場合、同じ出力の電磁波を用いて 180°パルスを印加するのに必要な時間は 30ms である。磁気モーメントは静磁場強度に比例するため、3.0T では 90ms の印加時間が必要である。
b. 横緩和時間は共鳴周波数幅に依存し、周波数幅は広いほど横緩和時間は延長する。
c. 縦緩和時間は静磁場強度と組織の相関時間に比例する。
d. 常磁性物質が持つ不対電子の磁気モーメントはプロトンの磁気モーメントの 658 倍である。
e. 緩和効果は不対電子とプロトンの距離の 6 乗に比例する。

 

解答

d

解説

RF

RFパルスは90°や180°など様々ですが、そのフリップ角θを決める式は

θ=γB1t で表されます。

B1:RF磁場、t:照射時間

問題では3Tで90msと言っています。正確な答えは不明ですがおそらく間違いだと思います。

横緩和時間

H2Oを例とすると、

水分子の中には2つの水素Hと1つの酸素Oがあり、Oには磁性がないので今回はHについてのみ考えます。

それぞれのHは静磁場B0を受けていますが、静磁場の他にも互いの磁性からΔBの磁場も受けています。このΔBは局所揺動磁場と呼ばれています。

このように双極子同士が磁場を与え合うのを双極子双極子相互作用(dipole-dipole interaction)といいます。

ここで、ΔBを受けた周波数は

ω=γ(B0+ΔB)=ω0+Δω

Δωは局所揺動磁場ΔBによって増えたり減ったりした分の角周波数です。

このΔBが大きく、ΔBを保っている時間が長いほど横緩和時間は短くなります。

言い換えるとΔωが大きいほど、つまり共鳴周波数ω0から離れるほど横緩和時間が短くなります。

問題の言い方では、周波数幅は広いほど横緩和時間は短縮するだと思います。

縦緩和時間

第5回-5でもやりましたが、縦緩和はRFのエネルギーにより励起された状態から熱平衡状態に戻る事です。

与えられたエネルギーは周りの分子に渡して熱平衡状態へとなっていくのですが、分子の運動周波数が共鳴周波数に近いときに最も効率良く行われ、共鳴周波数から離れるほど縦緩和はうまく進みません。

次に相関時間τですが、これは分子の回転周波数νのだいたい逆数となります。

相関時間とT1,T2の関係をグラフにすると

T2は相関時間が短くなるほど高くなりますが、T1は相関時間が10-9前後で一番低くなります。

磁気モーメント

電子の磁気モーメントの実測値は1.00116×9.2733×10-24

陽子の磁気モーメントの実測値は14.105×10-27

以上から(1.00116×9.2733×10-24)/(14.105×10-27)=658

ちなみに、、

磁気モーメントμの式は

q:電荷、L:角運動量、m:質量

DDI

DDIを式で表すと

μ:磁気モーメント、r:距離

まとめ

緩和についての問題でした。試験には出ますが業務には活かしづらいですね。

参考書籍・文献

MRI完全解説第2版 P27,84〜
など

 

解答に関して、今まで培った知識や書籍・文献を参考に導出したもので、私の認識不足により間違っている可能性もございます。ご理解いただいた上でご参考ください。

MRI認定試験の合格を目指している方のお手伝いができればと思っています。

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