【MRI認定 50】MRI検査時の鎮静に関する共同提言

認定試験第19回にて初めて登場しました。

詳細は日本小児科学会のホームページから確認することができますが、資料がとても長いのでまとめました。

技師として必要そうな所は赤マーカーにて線を引いております。

ほんっっとに長いし退屈なので最後のまとめだけ見てもらってもいいかもしれません。。タメになる内容ではあるのだが

  

この提言は初めに2013年5月に公表され、2020年2月23日に改訂版が出されました。

第19回MRI認定試験に出題されたのはこの改定された2020年版の内容となります。

そのためこの記事では2020年版について書いております。

 

※内容は説明が長いため所々抜粋したまでとしております。認定試験には詳しく覚える必要は今のところないと思いますが詳細を知りたい方は日本小児科学会のホームページから確認することをおすすめします。

目次

背景

「長時間・狭い空間・うるさい音」の環境下にて不動でいなければならないMRI検査は子供にとってとてもハードルが高い検査となります。

そのため鎮静によってMRI検査をすることが多くあります。

この鎮静は投与量や管理を間違えると自発呼吸が停止してしまう可能性があり、最悪の場合は死亡事故に繋がる恐れがあります。

そこで2013年に『MRI検査時の鎮静に関する共同提言』が公表されました。

この共同提言の目的は「診断・治療に必要な小児MRI検査を安全に、且つ、確実に行うための鎮静における基準を示すこと」であり、マニュアルとは違うので鎮静薬の種類や投与量、急変時の投与薬剤、薬剤量などの記載は全くありません。

そのため診療では役に立たないとの声もあるようですが、この提言はあくまで「鎮静に対する考え方、心構え」を示しているのです。

ちなみにこの提言に法的拘束力はありません。

概要

提言は以下の『提言の基本的な考え方4項目提言の内容6項目新規項目3項目』からなります。

提言の基本的な考え方4項目

1. 鎮静は自然睡眠と全く異なる
2. 鎮静の深さは「一連のもの」である
3. どの鎮静薬も危険である
4. パルスオキシメーターは酸素化のモニターであって、換気のモニターではない

この考え方を前置きとし、以下の内容が作られているのかと思います。

提言の内容6項目

第1章 MRI 検査の適応とリスクの説明と同意
第2章 患者の評価
第3章 緊急時のためのバックアップ体制
第4章 鎮静前の経口摂取の制限
第5章 患者の監視
第6章 検査終了後のケアと覚醒の確認

そして2020年改訂版より、以下の3項目が追加されました。

新規項目(補足)3項目

補足1. 薬に頼らない鎮静
補足2. 薬剤の投与経路とその特徴~安全かつ適切な薬剤投与のために~
補足3. MRI 検査時の鎮静に関する共同提言 Q&A

以上が提言の概要となります。

 

ある程度まとめてはいますが全部読むのはかなりキツいので、まずは技師に必要と思う項目(上の赤線引いてるやつ)だけ読むのがいいかと思います。

“技師に必要な項目”
提言の基本的な考え方(1、2、3、4)
提言の内容(第3章、第5章)
新規項目(補足1)

 

では各項目について説明していきますね。

提言の基本的な考え方 4つ

1. 鎮静は自然睡眠と全く異なる

自然睡眠
ふつうに眠ること。
呼吸や循環が危うくなるような事態になると目が覚めて対処できる。
いびきをかいても気道閉塞や呼吸停止、心停止にはいたらない。

鎮静
薬を用いて強制的に眠らせること。
気道が舌などでさえぎられると呼吸停止してしまう。
特に小児では口腔や咽頭のスペースが舌や大きめの扁桃で占められやすい。
少量の鎮静薬によっても上気道閉塞が生じうる。

自然睡眠と鎮静では生理学的な状態が全く異なり、鎮静では呼吸停止や心停止にいたる危険性があります。

同じMRI検査でも自然睡眠で行う場合と鎮静で行う場合では、必要な準備、診療体制は全く異なってきます。

2. 鎮静の深さは「一連のもの」である

鎮静の深さは4つに分類されます。

❶最小鎮静(minimal sedation)
❷中等度鎮静(moderate sedation)
❸深鎮静(deep sedation)
❹全身麻酔(general anesthesia)

しかし、これら鎮静レベルの境界はあいまいで、その深さは“一連のもの”であると言わざるを得ません。

そのため深さに応じた安全基準を設けることの意義は小さいのです。

 

※合目的的:物事が一定の目的にかなっているさま

上図からも分かるとおり中等度鎮静と深鎮静レベル以上では、反応性、気道、呼吸において大きく異なり、その安全性を考慮するとここでの区分は重要となります。

MRI検査では激しい騒音下に長時間の不動状態を維持するために、防御反射を維持できない「深い」鎮静になりがちです。

「深い」鎮静に陥った場合に、如何に早く気付き対処するか、ということが重要となります。

鎮静レベルは連続していて境界ははっきりしておらず、レベルごとに安全基準を設けても判断が難しい。
「深鎮静」から自発呼吸が不十分になる可能性があるため気をつけなければならない。

3. どの鎮静薬も危険である

どの薬剤が安全でどの薬剤が危険ということはありません。(浅い鎮静のみ達成しうるという薬はありません)

鎮静薬は気道、呼吸、循環のコントロールという生命を守る機能に作用する薬であり、そのうえ浅い鎮静から全身麻酔まで
は「一連のもの」だからです。

どの鎮静薬を使うかではなく、どのような考え方、どのような姿勢、どのような体制で使うかです。

4. パルスオキシメーターは酸素化のモニターであって、換気のモニターではない

パルスオキシメーターは鎮静を行ううえで必須のモニターでありますが、モニターしているのは SpO2(動脈血酸素飽和度)であって PaCO2 (動脈血中二酸化炭素分圧)や pH ではありません。

SpO2(動脈血中酸素飽和度):血液中のヘモグロビンに何%の酸素が結合しているかを示す数値(それをパルスオキシメータによって経皮的に測ったもの)

PaCO2 (動脈血二酸化炭素分圧):動脈血中に含まれる二酸化炭素の圧力、動脈血の中にどのくらいの二酸化炭素が溶け込んでいるのかを示す指標。うまく換気ができずに体外に二酸化炭素が排出できない時PaCO2が高くなります。二酸化炭素は血液に溶けると酸性の性質を持つため、PaCO2が高ければpHは下がり、PaCO2が下がればpHは高くなります。

鎮静薬投与下では、多かれ少なかれ PaCO2 は上昇し pH は低下する、と考えておくべきです。

酸素を投与すると低酸素血症に陥るまでの時間をかせぐ(SpO2 が低下するのを遅らせる)ことはできますが、呼吸性アシドーシスを防ぐことはできません。

SpO2 だけ見ていると、気が付かないうちに呼吸性アシドーシスが進行し、脳圧も上がり、危険な状態に陥っていることがあり得ます。

SpO2 だけみて安心はできない。
呼吸が浅くなったり回数が減るとSpO2は減るが酸素投与により正常値に戻る。
しかし呼吸は少ないためCO2を体外に排出できず体内の二酸化炭素が増えてしまうで気をつける。

提言の内容 6項目

第1章 MRI 検査の適応とリスクの説明と同意

検査の適応

MRI 検査の医学的な適応は、基本的に鎮静の有無とは無関係であり、他の検査より明らかに診断に役立つ場合には検査適応といえます。

検査依頼医に求められることは、検査適応と鎮静リスクを同時に考慮することとなります。

MRIは被爆がなく概ね安全であるため、小児の検査リスクは疾患背景と鎮静の組み合わせで発生します。

リスクの説明と同意

家族は鎮静の必要性とリスクに関して充分に説明を受ける権利を有します。

同意書の必要事項
1)MRI 検査についての説明
2)MRI 検査を安全に行うための問診票
3)MRI 検査手順に関する説明
4)造影剤(ガドリニウムなど)の説明
5)鎮静薬の種類と有害事象についての説明

第2章 患者の評価

検査依頼医は鎮静をすることによって患者が気道閉塞や呼吸抑制に陥った場合、その最悪の状態に充分な対応が可能かを想定し、以下の項目に従って患者を評価します。

具体的には、患者の気道と基礎疾患に着目し、病歴と身体所見をとることとなります。

問診
(1)年齢
(2)内服薬、アレルギーの有無
(3)気道閉塞に関わる因子
いびき、先天性気管狭窄、甲状腺腫瘍など
(4)鎮静による有害事象が生じやすい基礎疾患
先天性心疾患、気管支喘息など
(5)深鎮静が必要になる場合
注意欠如多動症、自閉スペクトラム症など

身体所見
(1)体重
(2)バイタルサイン(血圧,脈拍数,呼吸数,体温,SpO2)
(3)気道の評価
(4)全身状態の評価

第3章 緊急時のためのバックアップ体制

1. 緊急時に備えた準備の必要性

鎮静処置では、気道、呼吸関連の有害事象が起こりやすいです。
具体的には、気道閉塞、中枢性低換気、低血圧、徐脈、心停止、アナフィラキシー、喉頭けいれんなどです。

そのため鎮静下の MRI 検査では、緊急時蘇生時に必要となる設備、物品がすぐに利用可能であるように準備し、緊急対応する人員を事前に配置する必要があります。

ただし、MRI非対応の物品は重大事故の恐れがあるため、検査室に設置するすべての緊急用の物品で可能なものは MRI対応の物品とします。

2. 患者の監視に専念する医師または看護師の配置

鎮静中は患者の監視に専念する医師または看護師を配置します。

必要時は的確に緊急時対応バックアップチームに連絡をし、バックアップチームが到着するまでの間、基本的な救命処置、少なくともバッグマスクによる用手換気を実施することができる人員でなければなりません。

3. 検査室内の物品の設置・整備

MRI 検査室内に酸素と吸引の配管設置をします。

検査室内に配管がない場合は、隣室に酸素ボンベと吸引器を準備し、必要時に延長チューブなどを用いて、いつでも使えるように整備します。また、事故防止のため緊急時は必ず検査室外に患者を搬出してから救命処置を行います。

4. 緊急時のバックアップ体制

緊急時や蘇生時に対応するバックアップ体制をつくるとともに、必要時どのように連絡するか、緊急時に使用する物品をどこに設置するかなどの手順を作成しておきます。

夜間や休日など、人材が手薄な時間帯にどのような体制をとるか事前に定めておきます。

5. 緊急時の物品および薬剤の配置・整備

緊急時は磁場の及ばない検査室外に患者を移動して、救命処置を行います。

救急カートを近くに常備し、緊急時は、物品と薬剤、除細動器がすぐに利用できるように配置します。

パドルや挿管チューブ、エアウェイなどは患者の年齢や大きさにあったものを準備しておきます。

第4章 鎮静前の経口摂取の制限

鎮静薬による鎮静は自然睡眠とは違い、気道の反射が抑制されるため、誤嚥の危険性が生じます。そのため鎮静前に経口摂取を一定時間制限します。

清澄水は 2 時間前、母乳は 4 時間前、人工乳あるいは固形物は 6 時間前から行います。(2-4-6 ルール)

自然睡眠を誘導するために哺乳などの経口摂取を行った場合は、2-4-6 ルールに照らし合わせ鎮静薬を一定時間投与してはなりません。

緊急検査では摂取制限が困難なため、画像情報の必要性と鎮静リスクのバランスを考慮して実施の可否を判断します。

第5章 患者の監視

鎮静前の確認事項

(1) 鎮静前の患者の状態の評価・確認
最終飲食時刻やバイタルサイン。
(2) 蘇生に必要となる物品の準備・確認
(3) MRI に対応した生体情報モニターの準備
パルスオキシメーターは必ず準備する、カプノメーターの準備も推奨されている。
(4) 緊急時のためのバックアップ体制の確認

鎮静開始後から検査終了時までの患者監視

(1) 鎮静中の患者監視に専念する医師または看護師の配置
(2) 鎮静中の患者監視に専念する医師または看護師の資格
気道確保や用手換気の処置が確実に実施できる人員。
(3) 鎮静中の患者監視に専念する医師または看護師の監視場所
検査室内または操作室内で患者の様子や生体情報モニターを監視する。
(4) 監視内容
MRI 対応のパルスオキシメーターで酸素化を持続的に監視する。
検査内容・コイルの位置により患者の胸部が観察できない場合を除いて、目視あるいはカメラの画像を通して呼吸状態(呼吸による胸部の動き)を監視する。
操作室内から患者を監視できるように、2 方向以上からのモニターカメラを設置する。
(5) 監視内容の記録
(6) 監視の継続

SpO2 は酸素化の指標であり換気の指標ではありません。パルスオキシメーターではSpO2しかわからず、高二酸化炭素血症や呼吸性アシドーシスに陥っていても気付きません。 そのため低換気状態を早く見出すためには、胸郭の動き(一回換気量、呼吸数)を目視することが必要なのですが実際は目視できないこともあります。そこでPaCO2のわかるカプノメーターの監視が有用となります。

第6章 検査終了後のケアと覚醒の確認

鎮静を用いた MRI 撮像が終了しても、患者はまだ鎮静下にあります。患者が覚醒し鎮静前の状態にほぼ近づき、通常生活に戻ることができる状態になって初めて MRI 検査は終了します。

覚醒確認までは鎮静中と同じと考えて対処します。

新規項目(補足) 3項目

補足1. 薬に頼らない鎮静

薬剤を使用しない鎮静は時間や人手がかかるものが多いですが鎮静薬による合併症を回避できます。

ショ糖とおしゃぶり:(新生児)
ショ糖溶液の内服やおしゃぶりには泣いている新生児を落ち着かせる効果があります。

毛布でくるむ、固定具(Med-Vac )を使用:(新生児)
おくるみでしっかりとくるむと鎮静効果があります
Med-Vacは真空固定具で空気を抜くことにより体を固定する器具です

睡眠時間の調整:(新生児〜4歳)
昼寝をやめたりなど睡眠時間を削ることで自然睡眠を促す方法です。

プレパレーションとディストラクション:(4歳〜12歳)
プレパレーション:写真や模型を使用しながら事前に説明することにより、子どもなりの理解や心の準備を促す。
ディストラクション:お気に入りのブランケットやタオルを持参するなどの工夫やスタッフからの声かけなど。

模擬 MRI:(3歳〜8歳)
MRI の模型を用いて模擬検査を行います。

MRI 対応視聴覚システム:(3歳〜10歳)
MRI 対応の視聴覚機器を使い、映像を見たりヘッドホンで自分が選んだ音楽や物語を聴きながら検査を受けます。

補足2. 薬剤の投与経路とその特徴~安全かつ適切な薬剤投与のために~

鎮静薬の投与経路により薬剤効果がピークに達するまでの時間およびピークアウトする時間が異なるために有害事象のタイミングが違います。

静脈内、筋肉内、皮下、経口投与の順で血中濃度のピークが遅くなります。

MRI 撮像中だけでなく終了後にも有害事象を生じること、鎮静薬の追加投与を行う際には投与経路と投与量を慎重に選択する必要があることを理解しなければなりません。

補足3. MRI 検査時の鎮静に関する共同提言 Q&A

ここは長いのでさらっと読むだけでいいと思います。

Q1.共同提言の内容はすべて実行しなければ MRI 検査の鎮静をしてはいけないのか?
法的拘束力はない、鎮静実施の最終判断は各施設や医師の裁量で行うことが可能。

Q2.MRI に対応した生体情報モニターについて、最低限何が必要か?呼気終末二酸化炭素モニター(カプノメーター)は本当に必要か?
鎮静経路(経口/座薬/経静脈)を問わずパルスオキシメーターは最低限必要。換気を評価できるカプノメーターの併用が望ましい。

Q3.経口内服薬トリクロリールシロップⓇでも監視や記録が必要か?
静脈麻酔と同様の監視と記録が必要と考える。

Q4.小児の麻酔/鎮静に十分な知識と経験を有するとは具体的にはどのような内容か?
適切な患者評価、使用薬剤の習熟、有害事象に対応できる救急スキルの習得など。

Q5.昨今の考え方として鎮静担当医は一般小児科医より麻酔科医がすべきなのか?
経験のある麻酔科医が全例鎮静を担うことが理想。しかし医療現場では一般の小児科医が実施せざるを得ない施設が多いのが現実。

Q6.患者評価の際、麻酔科医への相談や高次医療機関に紹介するための目安や基準などはあるか?
アメリカ麻酔科学会の分類Ⅲ(重度の全身性疾患)以上は、経験豊富な上級医や麻酔科医に相談することを推奨している。しかし分類Ⅱ(軽度の全身性疾患)と分類Ⅲ(重度の全身性疾患)の境界は曖昧で施設状況や患者の個別評価、家族の意向など多角的に安全面の評価を行う必要がある。

Q7.小児の MRI 検査における鎮静にかかわる診療報酬は?
現時点(2020 年 2 月)では主な加算に静脈麻酔(L001-2)、磁気共鳴コンピューター断層撮影(E202)に対する小児鎮静下MRI 撮影加算。

Q8.共同提言に示してある承諾書について、実際使用する場合には各病院の承認(例えば記録委員会など)を得たものでないといけないのか?学会が承認している正式な文書であるのか?
共同提言の同意書は一例であり各病院の正式文書として承認を得ることが望ましい。

Q9.鎮静で予期せぬ深刻な合併症で訴訟になった際、共同提言はどこまで効力があるのか?
前文には「原則に則ったうえで臨機応変に対応する医師の裁量は認められるべきである」としており、共同提言には原則法的拘束力はない。

Q10.小児科医以外の医師(特に子どもの MRI 検査に関わる整形外科、耳鼻科、歯科口腔外科など)にどのようにこの共同提言を広めたらよいのか?
病院の医療安全委員会などで共同提言を周知することや、診療報酬面でインセンティブになるような働きかけなどが必要。

Q11.病院運営側や看護部などへ、どのようにこの共同提言を広めたらよいのか?
病院の医療安全委員会が窓口になることが望ましい。

Q12.小児に関わる医療従事者が少ない病院の場合、共同提言を実行するための代替策として成人領域での医療従事者でも関わりをもてる方法はあるか?
診療放射線技師や放射線部看護師の協力が必須であり、また緊急時のバックアップ体制として麻酔科医や救急医のサポートが必要。病院全体の医療安全という視点で取り組むことが望ましい。

Q13.MRI 検査では、できるだけ鎮静なしで行いたいのだが、何か良い方法はあるか?
「薬に頼らない鎮静」項目を参照。

Q14.小児で頻用されているトリクロリールシロップⓇでも事故の事例はあるのか?
主に呼吸関連の事故の事例があり、死亡例もある。海外の文献でも薬剤の種類や投与経路での事故の発生の有意差がなかったという報告もある。

Q15.鎮静前の経口摂取の制限について、2-4-6 ルールを守るべきか?
救急外来を中心にそれほど厳密に設定しなくてもよいとの報告も散見されるが、現時点(共同提言改訂版 2020 年)ではこれまで同様2-4-6 ルールで行うことを強く推奨している。

Q16.小児の経口摂取制限の時間を短縮できないか?
清澄水は摂取後 1 時間未満で胃内から排泄され、誤嚥のリスクを上げることなく待機中の絶飲時間の延長に伴う患者の口渇の軽減に効果がある。最近では全身麻酔前の清澄水摂取については 1 時間前まで許容する動きもあり、2 時間前の必然性は高くないよう。固形物や母乳については従来通りの制限時間が望ましい。

まとめ

この提言の技師として大事そうな所をまとめると、、

①鎮静は呼吸停止の可能性があり、自然睡眠と全く異なる。
②鎮静レベルは連続していて境界ははっきりしておらず、レベルごとに安全基準を設ける意義は小さい。
③絶対に安全という鎮静薬はなく、どの鎮静薬も危険である。
④パルスオキシメーターは酸素化のモニターであり、体内の二酸化炭素は把握できない。
⑤磁場による事故防止のため、MRI検査室に設置する緊急用品は可能な限りMRI対応の物とし、緊急時は必ず検査室外に患者を搬出してから救命処置を行う。
⑥検査中の監視では、パルスオキシメータ ーを使用し、目視あるいはカメラより呼吸状態(胸の動き)を監視する。あればカプノメーターの併用も推奨される。
⑦鎮静薬を使わないMRI検査を行うために、おくるみやMed-Vacの使用、MRI対応の視聴覚機器の使用が有用である。

余談ですがうちの病院でもなるべく鎮静薬は使わないで検査しております。しかし検査が難しそうな時にはトリクロリールシロップや静脈投与の鎮静薬で眠らせて検査をします。

数年前にMed-Vacを取り入れましたが、使用は未熟児の検査など生後すぐの患者のみに留まっています。Med-Vacでくるむ事で頭部コイルに入らなくなるため1才児以上では使用が難しいのです。でも躯幹部など頭部コイルを用いない検査には有効に使うことができます。

過去問

問題 49 「MRI検査時の鎮静に関する共同提言(2020年2月23日 改訂版)」について正しいのはどれか。2つ選べ。

1. どの鎮静薬も危険である。
2. モニターで監視すれば十分である。
3. パルスオキシメーターは換気のモニターである。
4. 鎮静の深さに応じた安全基準を設けることの意義は大きい。
5. 小児患者のMRI検査のための鎮静をより安全にするための基準を示している。

1.○
2.×目視やカメラにより呼吸状態を監視する。目視が難しい場合はカプノメータが有用。
3.×酸素化のモニターであり換気のモニターではない。
4.×
5.○

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次