【MRI認定 51】子宮筋腫の変性

子宮筋腫は循環障害や退縮により様々な二次変化をきたします。

第19回の試験でも変性について初めて問われました。

今回はこの子宮筋腫の変性について解説していきます。

目次

変性の種類

硝子化(ヒアリン変性)

大きい筋腫で高頻度(60%以上)で見られます。

進行すると平滑筋細胞を置換していきます。これがT2WI・T1WI共に筋層より低信号を示す原因であり、造影効果は乏しいです。

白色の硬い筋腫内に黄色く柔らかなゼラチン様部分として認められ多くは無症状です。

よく見る子宮筋腫の信号所見となります。

浮腫

閉経前女性により高頻度に認められるが、閉経後にも認められます。

浮腫性変化を伴う筋腫はT2WIにて高信号の腫瘍内部にひび割れ状の低信号が存在し、この低信号部分は造影で淡く染まります

また腫瘍はT2 shine throughの影響でDWIで高信号を示し、ADCでも高値となります。

憎悪すると嚢胞状変性となります。

浮腫の図絵

嚢胞化

硝子化が進行すると内容は液状となります。

T2WIで腫瘍が著明な高信号(一部低信号)となります。また浮腫と同じくT2 shine throughの影響でDWIで高信号を示し、ADCでも高値となります。

嚢胞破綻により子宮腔内や腹腔内に内容物が流出し下腹部痛を呈することがある。

造影効果は無いと言われています。

粘液状変性

T2WIで高信号と低信号が混在する網状や斑状となります。造影にてT2WIでの低信号部分に染まりが見られます。

粘液状変性の図絵

脂肪変性

硝子化や嚢胞化に続発するとされ、閉経後の退縮・退行変性によるとされています。

子宮筋腫内に脂肪を含有するため、脂肪含有量にもよるがT2WI・T1WI共に子宮筋腫と比較し高信号と、脂肪抑制T1WIで子宮筋腫より低信号となります。

微量な脂肪の検出にはin-phaseとopposed-phaseが有用となります。

脂肪変性の図絵

石灰化

筋腫の循環不全により石灰沈着が生じやすくなり、特に高齢者に多い。

硝子化変性した筋腫が陳旧化し二次性に石灰化し、桑実状の特徴的な所見を示します。

石灰化部分はCTにて高吸収、MRIでは低信号となります。

赤色変性(卒中性平滑筋種)

腫瘍辺縁での静脈血栓に起因する血行障害に伴う出血性梗塞・壊死であり、妊娠や血栓症を誘発する経口避妊薬・ホルモン剤が原因となります。

妊娠中には不均等な血流分布の変化により急激な疼痛を訴えることがあり急性腹症の原因となることもあります。

筋腫核の出血や腫瘍辺縁の血栓閉塞した静脈を反映して、T1WIで辺縁高信号T2WIで同部位低信号のrimと内部高信号、造影剤で増強されません。

赤色変性の図絵

このrimは血栓閉塞した静脈内の凝血した赤血球を反映しているとされ、T1WIの高信号はメトヘモグロビンに起因しているとされているため発症直後には認められないことがあります。

T2WIの低信号はデオキシヘモグロビンを反映しているとされ発症早期から認められます。しかし筋腫は元々低信号であることが多いためrimの低信号を同定するのが難しい場合があります。そこでSWIやT2*WIが有用となることがあります(脳出血の同定と同じ原理です)。

脳内出血の時期と血腫及び信号強度の関係

造影では梗塞のため造影効果はありません。

時間が経過すると腫瘍全体がT1WIで高信号となるが凝固壊死を反映していると考えられます。

壊死・感染

循環不全により筋腫が壊死に陥ると二次的感染を起こしやすい。産褥期、人工妊娠中絶やIUD挿入などの子宮内操作にも関連して起こり、疼痛や発熱の原因となる。粘膜下筋腫では子宮内膜の潰瘍のため感染の機会が多いと考えられる。

過去問

19-2 子宮筋腫症例の骨盤部MRI画像を示す。最も考えられる変性はどれか。

1. 赤色変性
2. 脂肪変性
3. 嚢胞変性
4. 水腫様変性
5. 粘液様変性

1.×赤色変性 静脈の閉塞による出血性の梗塞、これによる変性。T1:辺縁高信号、T2:辺縁低信号、造影:閉塞により造影効果はなくなる。
2.×脂肪変性 T1:高信号、T2:高信号、造影:脂肪はない
3.○嚢胞変性 T1:低〜等信号、T2:高信号、造影:なし
4.×水腫様変性(浮腫)T1:等信号、T2:高信号、造影:中等度〜高度
5.×粘液様変性 T1:低〜等信号、T2:高信号と低信号が混ざる、造影:T2low部に造影効果あり
ヒアリン変性 T1:等信号、T2:低信号、造影:なし
石灰化 T1:無信号、T2:無信号、造影:なし

まとめ

T2WIとT1WIの信号パターンを言葉として覚えるのも大事ですが、可能であれば画像の見た目で覚えられるとより良いと思います。

ただ高信号と低信号で覚えても実際の子宮筋腫はサイズも形状もバラバラで、筋腫内の信号も変性の時期によって変わります。

 

一応簡単にまとめますと、、

ヒアリン変性はよくある筋腫の信号パターンとなります。

浮腫・嚢胞・粘液状変性はT2WI高信号、T1WIで低信号となります。そしてT2WIでは一部低信号となる部分が存在しその度合いは異なり同部位が染まります。

脂肪変性では脂肪を含む部分が存在します。

石灰化変性では石灰化している部分があります。

赤色変性ではT1WIが特徴的で高信号となるrimが存在します。

 

子宮筋腫は変性の他に変異というものもあります。また別の記事で書けたらと思います。

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