【MRI認定52】MRIカード非保有者の新たな施設基準・実施条件

MRI認定試験で「遺残リードがある患者はMRI検査できない」というお馴染みで当たり前の常識がありましたが、、

なんとMRI可能となりました。

しかも最近です。

ただし今までのMRI対応ペースメーカーのMRI検査と同じように検査できるわけではなく、一定の条件を満たす必要があり、現状ではかなり厳しいかと思います。

条件の中でも一番厳しいのが『不整脈専門医の常勤』かと思います。

 

詳細は日本医学放射線学会のホームページより『心臓植込みデバイス患者のMRI検査に関する運用指針 2024年1月12日』を見て下さいね。

目次

MRI検査の可否

MRI検査可能(MRIカード発行)
MRI対応機種でありペースメーカーと接続されている経静脈リードが同一企業の製品
植え込み後6週間以上経過

MRI検査不可(MRIカードは発行されない)
MRI対応でないリード
遺残リードや心外膜リード
禁忌となる装着品(コネクタなど)
植え込み後6週間未満

MRIカード非保有者の新たな施設基準と実施基準

施設基準

以下の施設基準を満たす施設でのみMRI検査が可能となります。

①MRIカード保有者のMRI検査の施設基準および実施条件を全て満たしていること。
放射線科診断専門医不整脈専門医、並びに磁気共鳴専門技術者がそれぞれ常勤していること。
③MRI検査室の近接した部屋に、体外式除細動器と(一時)経皮ペーシングを備え、救急蘇生に対応できる体制が整っていること。
④MRI検査依頼医師と不整脈専門医によるリスクの説明が行われ、文書による患者同意が取得されていること。
⑤MRI対応心臓植込みデバイス新規植込み後6週未満の患者、およびデバイス本体はMRI対応であるがMRI非対応リード(legacy lead)患者、遺残リードを有する患者、等のハイリスク患者のMRI検査については、MRI検査時に循環器医師の立合いが求められる。
⑥MRI安全管理のための登録システムに登録すること。

①は、そもそもカード保有者のMRI検査ができる状態であることなので当たり前ですね。
②は一番ハードルの高い所だと思います。放射線科診断専門医、不整脈専門医、磁気共鳴専門技術者の常勤。
③は対応出来る施設は多いと思います。
④は不整脈専門医がいれば問題ないでしょう。
⑤ペースメーカーを扱う施設ではたいてい循環器医師がいるので問題ないでしょう。
⑥これも問題ないですね。

実施条件

施設基準を満たした上で、以下の実施条件を遵守することが必要となります。

①MRIカード非保有者のデバイス本体は、MRI対応機種であること。
②MRI検査時には、撮像前から終了後まで心電図あるいはパルスオキシメーターによるモニター管理を行う。
③MRI検査時には、体外ペーシング可能で心電図モニター付き除細動器、プログラマーおよび緊急事態に対応出来る準備が必要である。
④MRIカード非保有者のMRI検査を行う施設では、救急対応が可能なスタッフの下で、院内ワークフローおよび院内プロトコールに順守してMRI検査を施行する。
⑤心臓植込みデバイス患者のMRI撮像前後で、ペーシング閾値・心内電位波高値・リード抵抗などのパラメータを測定し、異常がないことを確認する。
⑥ペースメーカ依存または自己脈のない患者のMRI検査では、緊急一時体外式ペーシングの準備が必要である。
⑦心臓植込みデバイス患者においては、心拍応答機能などの付加機能をオフにする必要がある。また、同様にICD患者においては、MRI撮像前に頻脈検出・治療機能をオフにする必要がある。
⑧MRI撮像を行う場合には、プログラム操作が可能なスタッフが撮像中もMRI室で立ち会う必要がある。

①大事ですね。
②MRI対応ペースメーカーの検査においては当たり前ですね。
③④⑤⑧は院内でワークフローや決まりごとを作れば問題なさそうです。
⑥⑦は患者情報が重要ですね。

実施条件に関しては施設でのワークフローなどをしっかり作ることが重要となりそうです。

安全性のクラス分類

MRIカード非保有者であっても安全性のエビデンスから、非対応リードメーカー違い遺残リードなどでもMRI検査が可能と考えられるようになりました。

クラスⅠ 検査の安全性が保たれ、広く見解が一致している

MRIカード保有者であり、施設基準・実施条件を満たした施設で行うMRI検査

クラスⅡa 検査の安全性がほぼ確立している

MRI非対応経静脈リードがMRI対応デバイス本体と接続されている

経静脈リードとデバイス本体どちらもMRI対応であるがメーカーが異なる

遺残リードのない患者でMRI検査を複数回施行する

デバイス植込み後6週未満に行うMRI検査

クラスⅡb 検査の安全性が十分確率しているとは言えない

心内膜遺残リードを有している場合のMRI検査

現時点ではMRI検査は控えるべきと考えられる状況

コネクターが使用されている患者

心外膜リードを有する患者

リード不全を伴う患者

MRI検査の影響

MRI認定試験でも覚えとかなきゃいけないので復習程度に

静磁場の影響

吸引力やトルクがかかり、デバイス本体が移動する可能性があります。また、リードには磁性体が少ないためリードのディスロッジ(移動や脱落)の可能性は少ないと考えられます。

磁場勾配の影響

デバイス本体・リードに過剰電流が流れることで心房筋や心室筋に意図しない刺激が起こることによる危険な不整脈の発生、またデバイス本体の発熱の可能性があります。

高周波(RF)磁場の影響

発熱の可能性。特にMRI非対応デバイスのリード先端周囲組織の温度が上昇し、組織にダメージをきたす可能性があります。

oversensing の可能性があり、自己脈のないペーシング依存患者では心停止をきたす可能性があります。またICD患者では不適切ショック作動が発生する可能性があります。

Reed switch への影響

MRI非対応デバイスではこの機能が強い電磁干渉により影響を受ける可能性があり、非同期モードの状態になる可能性があります。
(Reed switch:マグネットを本体にかざすことでプログラム変更を行う機能)

電気的リセット

強い電磁干渉下では power-on-reset が発生し、ペーシング極性が単極になることがあります。この状態では oversensing が発生し、自己脈のないペーシング依存患者では心停止をきたす可能性があります。

電池残量への影響

想定以上の電池消耗が生じる可能性があります。

 

上記の影響の中でも、特に「Reed switchの影響」「電気的リセット」「高周波磁場によるoversensingやICD不適切ショック」は主にMRI非対応デバイスで発生しているようです。

まとめ、と認定試験について

新たな施設基準と実施条件が加わったために今までダメとされていた非対応リードや遺残リードでもMRI検査できる可能性が出てきました。

そのためリード抜去できなくて遺残リードとなってしまい今までMRI検査ができなかった患者などには朗報だと思います。

しかし現状では条件を満たすことはなかなか難しそうですね。。

 

認定試験については、

年々ペースメーカーに関する出題は減少傾向にある気がしますが、最近の試験において問49、問50で「MRI検査時の鎮静に関する共同提言(2020年2月23日 改訂版)」「前立腺癌の骨転移検出のための全身MRI撮像の細則(2022年3月9日 一部改訂)」「臨床 MRI 安全運用のための指針(2022 年 5 月 31 日一部改訂版)」などの運用改訂されたものについて出題されています。

この流れから今回の内容も出題される可能性は十分あります。

試験対策としても一度確認するのが良いかと思います。

過去問

今回の記事より、過去に出題されたペースメーカーに関する問題をピックアップしました。

18-問題44 MRI 撮像における心臓植込みデバイスへの影響について正しい組み合わせはどれか。 

1. 静磁場 — 頻脈性不整脈の誘発
2. 静磁場 — リード先端と組織接点での温熱効果
3. 傾斜磁場 — ペースメーカ機能のリセット
4. 傾斜磁場 — 金属デバイスへの機械的外力 
5. 高周波磁場 — 非同期ペーシング

1.×高周波磁場、傾斜磁場
2.×高周波磁場
3.×静磁場
4.×静磁場
5.○

16-45)条件付 MRI 対応ペースメーカについて正しいのはどれか。2つ選べ。 

1. オーバーセンシングが起こると頻脈になる
2. MRI 検査時は必ず生体モニタを装着しなければならない
3. ペースメーカの MRI 対応モードは自己脈より短く設定する
4. ペースメーカ手帳の表紙には必ず適応磁場強度が記載されている
5. ジェネレータのみを MRI 対応機種に交換すると条件付 MRI 対応になる

1.×ペーシング機能を過剰に抑制し徐脈もしくは脈が打たれなくなる。
2.○
3.○
4.×記載あるものもないものもある。
5.×リードもMRI対応である必要がある。

14-30)条件付MRI対応ペースメーカに関する正しい記述はどれか。2つ選べ。

1. オーバーセンシングが起こると頻脈になる。
2. MRI 検査時は必ず生体モニタを装着しなければならない。
3. ペースメーカの MRI 対応モードは自己脈より短く設定する。
4. ペースメーカ手帳の表紙には必ず適応磁場強度が記載されている。
5. ジェネレータのみを MRI 対応機種に交換すると条件付 MRI 対応になる。

1.×徐脈になる。オーバーセンシング:ペースメーカーがノイズを自己心拍と勘違いして感知してしまい、本来刺激されなければならないところで刺激を抑制する状態。アンダーセンシング:自己心拍が出ているにもかかわらずペースメーカーが感知できず、自己心拍がないものとして判断されペーシング刺激をする状態。
2.○
3.○
4.×記載のないものもある。
5.×リードも適応のものでなければならない。

13-31) 条件付き MRI 対応ペースメーカを植込んだ患者の MRI 検査を実施するための要件に関する正しい記述はどれか。(正解 2 つ)

1. 磁気共鳴専門技術者でないと実施できない。
2. 呼吸停止のシーケンスを撮像してはならない。
3. 検査時は生体モニタを装着しなければならない。
4. 所定の研修を受講していなければ実施できない。
5. ペースメーカの MRI 対応モードは自己脈より長く設定する。

1.×可能。
2.×可能。
3.○
4.○
5.×短く設定。

13-34) 添付文書の記載内容に関する正しい記述はどれか。(正解2つ)

1. 添付文書は電子化して公開しなければならない。
2. MRI 検査に関する記載事項がなければ MRI 検査は施行可能である。
3. 被検者のいかなる状況においても添付文書を逸脱すると刑事責任を問われる。
4. 条件付 MRI 対応ペースメーカの添付文書には患者への教育の徹底が記載されている。
5. 添付文書は医療機器や医薬品の製造者が遵守しなければならない事項が記載されている。

1.○ちなみに2021年8月から紙の添付文書が廃止され電子的な閲覧が基本となるそう。
2.×施行不可でも記載がない場合がある。
3.×特段の合理的理由がある場合などは問われるとは限らない。
4.○
5.×おそらく無い。

12-29)以下の警告及び禁止図記号とその説明の正しい組み合わせを選択して下さい。(正解 1 つ)

日本磁気共鳴専門技術者認定機構より

1. (A)強磁場によるリスク(B)MR 不適合(C)金属製体内植込物保有者の立入禁止
2. (A)強磁場によるリスク(B)ペースメーカ装着者の立入禁止(C)金属製体内植込物保有者の立入禁止
3. (A)強磁場によるリスク(B)金属製体内植込物保有者の立入禁止(C)ペースメーカ装着者の立入禁止
4. (A)金属製品・時計の持込禁止(B)ペースメーカ装着者の立入禁止(C)金属製体内植込物保有者の立入禁止
5. (A)金属製品・時計の持込禁止(B)金属製体内植込物保有者の立入禁止(C)ペースメーカ装着者の立入禁止

1.×
2.○JIS Z 4950
3.×
4.×
5.×
解説(標識)

12-36)体内植込み型心臓ペースメーカについて正しい文章を選択して下さい。 (正解2つ)

  1. 条件付 MRI 対応心臓ペースメーカで 3T 対応の機種はない。
  2. B1+rms<2.0μT は SAR<0.1W/kg より撮像条件の制限値が緩和される。
  3. 条件付で 1.5T 装置の可能なペースメーカは 0.5T 装置でも検査可能である。
  4. 条件付 MRI 対応心臓ペースメーカは水平磁場のトンネル型のみ許可されている。
  5. 条件付 MRI 対応心臓ペースメーカの遺残リードは条件付で MRI 検査可能である。

1.×ある。
2.○
3.×検査可能な磁場より低くても不可。
4.○
5.×デバイスに接続することで発生する電流を静流化しているため。

11-30)医療デバイスを植込んだ患者および医療従事者に対する対応について正しい説明を選択してください。(正解3つ)

1.保温下着による発熱は発汗が主たる原因である。
2.銅線を巻いた避妊リングは発熱の危険性がある。
3.医療従事者はコンタクトレンズをしないほうがよい。
4.条件付 MRI 検査可能人工内耳の最大の危険性はトルクである。
5.心臓ペースメーカ植込み者は漏洩磁場のある操作室には入室できない。

1.○汗により衣類が湿り誘導電流が流れやけどの恐れがある。また金属線維などを含んでいる物もあり発熱の危険がある。
2.○銅は導電性が高いためRFパルス照射時に電流が流れると発熱する可能性がある。
3.×問題ない。
4.○
5.×5ガウスラインまではペースメーカに影響を与えず、操作室には5ガウスの漏洩磁場は無いと考えられるため入室は可能。

11-31)ペースメーカ植込み患者の MRI 検査を実施する場合、生体モニタにて連続的に心拍を監視することが義務付けられている。これに関して、検査中に最も気をつける必要のある現象を以下から選んでください。(正解1つ)

1.ペーシング閾値
2.マグネットモード
3.オーバセンシング
4.予期しない神経刺激
5.ペースメーカリセット

1.×
2.×
3.○ペースメーカにはペーシング機能とセンシング機能がある。
ペーシング機能→設定脈拍数より自己脈が少ない時電気的刺激を加え脈拍を上げる。
センシング機能→自己脈が多い時脈拍を抑制する。
傾斜磁場などにより発生する誘導電流を誤って信号と認識しオーバーセンシングが起こると心停止となる恐れがある。
4.×
5.×

10-27)ペースメーカの MRI による影響の中で、静磁場から受ける作用を選択してください。(正解2つ)

1.ぺーシング閾値・・・・・ 心筋組織の炎症反応
2.マグネットモード・・・・・ 電池の残量を調べる機能
3.オーバセンシング・・・・・ ペースメーカの刺激の停止
4.ペースメーカリセット ・・・・・ ペースメーカの安全機構
5.ラピッド心房ペーシング ・・・・・ 心臓を刺激

1.×RFによる電流がリード先端に流れ温度が上昇しぺーシング閾値が上昇する。
2.○静磁場による。
3.×自己脈ではない信号を誤認識することによりその間ペーシングが行われなくなる現象。RF、傾斜磁場による。
4.○静磁場による。
5.×傾斜磁場と RF によるノイズが刺激電位となり、心臓を刺激するため。

9-25)心臓ペースメーカ植込み者に対して MRI 検査を実施する場合に、静磁場によって ペースメーカが受ける障害を選択してください。(正解1つ)

1.火傷
2.心室細動の誘発
3.アンダーセンシング
4.オーバーセンシング
5.ペースメーカリセット

1.× RFパルスによる。
2.×RF、傾斜磁場による。
3.×正常に自己脈を感知できない現象。RF、傾斜磁場による。
4.×自己脈ではない信号を誤認識することによりその間ペーシングが行われなくなる現象。RF、傾斜磁場による。
5.○静磁場による。

8-32)次の安全性に関わる文章で、正しい文章を選択してください。(正解 2 つ)

1.条件付 MR 対応ペースメーカは除細動付にも対応している。
2.条件付 MR 対応ペースメーカは 1.5 T 装置以下で検査可能である。
3.条件付 MR 対応ペースメーカでは仰臥位と腹臥位で検査が可能である。
4.条件付 MR 対応ペースメーカの本体は胸郭に埋められていることに限る。
5.ペースメーカの装置本体が身体から除去されていれば MR 検査が可能である。

1.○
2.×ペースメーカーによる。
3.×ペースメーカーによる。仰臥位と腹臥位で可能なものもあるし仰臥位でのみ可能なものもある。
4.○
5.×リード線も除去されていなければならない。

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