用語
肩の関節唇上部の損傷。
上腕二頭筋長頭腱が引っ張られることによる。
SLAP(Superior Labrum Anterior and Posterior)
解説
上腕二頭筋長頭腱の付着部である関節唇上部の損傷。
牽引力や捻りなどによって生じる。
野球での投球、バレーボールのスパイクなど、オーバーヘッドアスリートによく見られる。
4分類
type Ⅰ:上方関節唇の変性、毛羽立ち。
type Ⅱ:上方関節唇の剥離を伴う断裂。関節唇と長頭腱は連続している。
type Ⅲ:上方関節唇のバケツ柄様断裂。長頭腱には断裂は及ばない。
type Ⅳ:上方関節唇のバケツ柄様断裂。長頭腱にまで及ぶ。
typeⅠ損傷の診断はMRIでは難しい。
画像診断されるSLAP損傷のうちtypeⅡの頻度が圧倒的に高い。
MRI
シーケンスはT2WI、脂肪抑制T2WI、プロトン密度WI、T2*WIなど
軸位断(Axial)、斜位冠状断(coronal)
損傷があると関節唇内の亀裂やT2高信号が見られる。
関節唇損傷と連続して傍関節唇嚢胞(paralabral cyst)を認めることがあり、嚢胞が存在すると関節唇損傷を強く示唆する所見となる。
T2*WIでは損傷を同定する感度が高いが、過剰診断に気を付けなければならない。
またマジックアングルにも注意が必要。
Axialの場合は構造上、前方の関節唇にマジックアングルが出現しやすく、後方は出現しにくい。
正常変異
関節唇下裂隙(sublabral recess)
関節唇と関節軟骨との間に生理的に存在する隙間。病的所見ではない。線状で滑らかであれば正常。
関節唇遊離(sublabral hole)
関節唇が関節窩から離断している。前上方関節唇に多い。
関節唇欠損+太い中関節上腕靭帯(Buford complex)
前上方の関節唇の欠損と肥厚した中関節上腕靭帯。
これら正常変異の多発する前上方関節唇については通常は診断する必要はないとされる。
認定試験でのポイント
過去問ではSLAP損傷について詳しく問われたことはありません。
試験対策としては、肩の上方関節唇が損傷するということだけ覚えておけば良さそうです。
過去問
18-問題 2 骨軟部疾患について正しいのはどれか。2 つ選べ。
1. 腱板損傷は棘下筋に好発する。
2. 円板状半月板は外側に好発する。
3. テニス肘は主に尺側手根伸筋の起始部の疾患である。
4. TFCC(triangular fibrocartilage complex)損傷は手関節尺側に好発する。
5. SLAP(superior labrum anterior and posterior)損傷は股関節唇の上部に好発する。
1.×棘上筋の大結節付着部付近で好発。問題4参考。腱板断裂
2.○円板状半月板は断裂しやすい。円板状半月板
3.×正式には「上腕骨外側上顆炎」。短橈側手根伸筋の起始部の疾患。腱への負担が原因。
4.○TFCC(三角線維軟骨複合体)、三角繊維軟骨・背側遠位橈尺靭帯・掌側遠位橈尺靭帯・尺側側副靭帯
5.×肩関節の上方関節唇損傷、上腕二頭筋の作用による。
15-1) 正しい記述はどれか。2つ選べ。
- 円板状半月板は外側半月板に好発する。
- キーンベック(Kienböck)病は舟状骨の疾患である。
- テニス肘は主に尺側手根伸筋の起始部の疾患である。
- TFCC(triangular fibrocartilage complex)損傷は手関節尺側に好発する。
- SLAP 損傷(superior labrum anterior and posterior lesion)は股関節唇の上部に好発する。
1.○円板状半月板は断裂しやすい。円盤半月板
2.×月状骨の血流が悪くなり骨壊死する。
3.×正式には「上腕骨外側上顆炎」。短橈側手根伸筋の起始部の疾患。腱への負担が原因。
4.○TFCC(三角線維軟骨複合体)、三角繊維軟骨・背側遠位橈尺靭帯・掌側遠位橈尺靭帯・尺側側副靭帯
5.×肩関節の上方関節唇損傷、上腕二頭筋の作用による
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